2018年のIPO2017年と同じ90社。売上・利益は減少傾向だったが、バリュエーション、は高め。

 

【ハイライト】

1.  IPO社数は2017年と同じ90社。

2.  2018年の大型IPOはソフトバンク、メルカリ等、話題性多し。

3.  申請期の売上・利益が減少傾向だったが、予想PERは上昇の結果、株式時価総額は2017年と同水準。但し今後はマクロ環境、消費税増税に留意。

 

1225日で2018年のIPO案件が全て終了しました。

 

2017年に引き続き、2018年のIPOマーケットの総括をしてみたいと思います。

 

IPO社数は前年同様の90社。マザーズ上場が大幅に増加。】

 

グラフ①

過去10年のIPO社数とその年の大納会の日経平均終値をグラフにしました。

 

2008年のリーマンショックを機に日経平均が大きく下がると共に 2009年にはIPO社数は19社まで落ち込みました。それ以降、日経平均は東日本大震災の影響を受けるも、2015年まではIPO社数は6年連続増加しましたが、2016年に7年ぶりの減少となりましたが、2017年は90社に増加し、2018年も90社と横ばいとなりました。

 

但し、日経平均は201812月後半の市場急落により1228日終値は20,014円となり、7年ぶりに前年を下回りました。

 

このグラフを見る通り、IPOはやはりマーケット環境に大きく影響を受けると言ってよく、2019年のIPOには留意が必要です。

 

 IPO社数

グラフ➁

2018年の市場別の上場社数は、マザーズが2017年の49社から2018年が63社と大きく増加し、従来からの傾向と同様に全体の3分の2以上となりました。一方でジャスダックスタンダードが2017年の19社から14社に減少し、東証一部が11社から7社、東証二部が8社から5社といずれも減少しました。これは発行体の利益額が従来より減少して来ていることが要因と思われます。また、2018年は地方市場へのIPOは札幌アンビシャスに1社のみでした。

 

【主幹事トップは僅差で前年同様野村。藍澤証券が1社主幹事。】

 

 主幹事

グラフ③

次に主幹事証券ですが、2018年は野村が23社と2位のみずほにわずか1社差で2017年同様首位となりました。3位はSMBC日興が19社と僅差で続きます。また三菱UFJモルガンスタンレーが5社のうち、単独主幹事は2社だけであり、残りの3社は、キュービーネットホールディングス、ラクスル、ソフトバンクなど大き目の案件の共同主幹事を獲得している部分が特徴的です。また、藍澤証券がリフォーム事業のFUJIジャパンの札幌アンビシャスIPOの単独主幹事を務めました。

 

【申請期売上高50億円以上で半数以上 経常利益5億円未満が引き続き、全体の半数以上】

 

売上高  経常利益

グラフ④


グラフ➄

売上高については、2016年、2017年と売上高50億円以上が増加していたのが、2018年は50億円~100億円、100億円~500億円が減少した代わりに、10億円未満が2017年の5社から10社、10億円~20億円が14社から17社と増加し、案件が小粒になって来ています。

 

一番売上高が小さいのは、医薬品等の研究開発、製造、販売を行っているDelta-Fly Pharma2億円、一番大きいのはソフトバンクの37000億円でした。

 

経常利益も減少傾向でした。5億以上の各階層全てで件数が減少し、一方で、1億円未満、1億~2億が増加することになりました。一番利益が小さかったのは、Delta-Fly Pharmaの経常赤字73900万円。一方で経常利益が一番大きかったのはやはりソフトバンクの7000億円でした。なお、メルカリの利益は非開示となっています。

 

2017年との比較ですが、2017年は2016年比、利益のレンジが全体的に右寄りになり、利益の増加傾向が見られ、明らかに企業業績が伸長している証左でしたが、2018年は売上・利益共に減少傾向であり、日本経済の今後の見通しに一定の示唆を与えるものだったと考えています。

 

従来からの申請期売上高 50億円程度、経常利益は1億円以上5億円未満という発行体のイメージが引続き踏襲されることとなりました。

 

【予想PERの平均は2017年の18.7倍から24.3倍へ(赤字と100倍超を除く)。ラクスルが4838倍と突出】

 

 予想PER


グラフ⑥

次に公開価格(※初値ではない)による予想PERですが、PERが一番高かったのは、印刷及び集客支援のシェアリングプラットフォーム「ラクスル」を中心とした印刷事業、物流のシェアリングプラットフォーム「ハコベル」を中心とした運送事業等、産業毎のシェアリングプラットフォームの創出のラクスルが4838倍と突出、次に高いのが勤怠管理、経費精算、工数管理等を一体化したクラウドサービス「TeamSpirit」等の提供のチームスピリットが574倍でした。ラクスルは、一時の、Gunosy5241倍、フリークアウトの6451倍。アキュセラインクの2195倍を彷彿とさせる水準でしたが,ラクスルは上場翌期の今期は利益を非開示としています。また、バイオ系2社の赤字を除いた会社でPERが一番小さかったのは、投資用新築一棟賃貸マンションの用地仕入・企画設計・施工・監理・賃貸仲介・賃貸管理等のグッドライフカンパニーで4.8倍でした。

 

全体の予想PER平均は2014年が22.4倍、2015年が19.8倍、2016年が16.4倍と、ずっとバリュエーションが下がって来ていた中で、2017年に18.7倍と回復し、今回24.3倍と近年では一番高い水準となりました。

 

【株式時価総額は71807億円から48000万円まで。】

 

グラフ➆

公開価格で計算した株式時価総額の分布ですが、従来は2014年が100億円未満で全体の60%2015年は72%2016年は75%と小型化していたのが、2017年は100億円未満で64%と回復して来ましたが、2018年は68%となりました。一番小さいのは、FUJIジャパンで48100万円でした。本件は札幌アンビシャス銘柄であり、マザーズの上場基準である株式時価総額10億円を超えられないための上場市場選定と思われます。

 

また、時価総額で一番大きかったのは、ソフトバンクの71807億円でした。

 

【初値騰落率は8091分け。最大はHEROEZ4500円が49000円。騰落率989%

 

グラフ⑧

90社の公開価格に対する初値の騰落率は、初値が公開価格を上回ったケースが80社、公募割れが9社、公開価格と同額が1社でした。2016年が67151分け、2017年が828敗であり、2018年は2017年と同水準でした。また騰落率が100%~200%(公開価格の2倍~3倍)となった社数は30社であり、これも2017年と同水準となります。。

 

【ファイナンス総額はソフトバンクの26460億円が最大。オファリングレシオは引き続き株式時価総額の4分の1が目安。】

 

ファイナンス総額

 

グラフ➈

公募・売出しを含むファイナンス総額(OAは含まず)ですが、10億円未満が40社、20億円未満で 63社と全体の70%近くになり、従来からの傾向を引き継いでいます。一番小さいのはFUJIジャパンの8100万円(うち公募4100万円)、一方で一番大きいのは、ソフトバンクの26460億円(公募なし)でした。

 

 オファリングレシオ

 

グラフ➉

次にファイナンス総額と同じくらい重要で、株式時価総額の何%をマーケットに放出するかという指標のオファリングレシオ「(公募数+売出し数)÷発行済株式総数(公募含む)」ですが、これは平均が26.2%でした。但し、概ねIPO時に約4分の1のファイナンスを行っているということになります。これはマーケット環境に関係なく、従来からこの程度の比率になっています。

 

今回一番小さいのは、人工知覚技術の研究開発及びソフトウェアライセンスの提供のKudan2.9%でした。そして一番大きかったのは、仮設資材、物流機器を中心とした金属製品の製造販売の信和が、100%で、時価総額158億円全株をマーケットで売却することになりました。結果として、公開価格1150円に対し、初値は1106円となり、初値割れなっています。

 

 

【まとめ 】

 

2018年のIPOマーケットはソフトバンクの大型IPO、メルカリなど話題性がありましたが、全体感としては、売上・利益が若干コンパクトになりつつも、予想PER2017年に比べ、高めに評価された結果、時価総額の規模感は2017年と同様の水準となりました。

但し筆者としては、申請期の売上・利益規模が小さくなったことは各発行体に係る景気環境に若干の変調あったものと考えており、また消費税10%201910月から導入されることによる影響がIPOにどの様影響を及ぼすのか、留意が必要と考えている次第です。

 

 

拙い文章ではありましたが、最後までお読みいただき、まことにありがとうございました

2019年も何卒、よろしくお願い申し上げます。