【バリュエーションが大幅に上昇。2018IPO上半期総括 】

 

 

今年も半分が過ぎました。今回は2018年上半期のIPOマーケットの総括をしてみたいと思います。

 

【上半期新規上場社数は36社、市場はマザーズが圧倒的。 上半期は日本取引所上場のみ】

 

 日経平均

過去10年のIPO社数とその年の大納会の日経平均終値をグラフにしました。2017年は629日終値現在です。

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先ずは2007年の世界的なサブプライム問題表面化より、日経平均とIPO社数は下げに転じ、2008年のリーマンショックを機に日経平均が大きく下がると共に、 2009年にはIPO社数は19社まで落ち込みました。それ以降、日経平均は東日本大震災の影響を受けるも、IPO社数は7年連続で増加しましたが、一昨年通期は上場社数が前年を下回りました。 今年は上半期で36社が上場しており、昨年上期の39社とそれほど変わりませんが、今回、バリュエーションは大きく上昇に転じました。

 

このグラフを見るとIPOはやはりマーケット環境に大きく影響を受けると言ってよいでしょう。但しIPO社数はかつての150社を超える水準にはほど遠い状況です。

 

 

上場社数

グラフ
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上半期の市場別のIPO社数は、マザーズが26社と全体の70%以上となっており、また昨年、一昨年上期同様、近年マザーズ上場の傾向が強くなっています。また上期は日本証券取引所参加の東証一部、二部、マザーズ、ジャスダックのみの上場であり、地方証券取所の上場はありませんでした。

 

【主幹事トップは野村9社、2位はSMBC日興の8社。それ以降も僅差】

 

 主幹事証券

グラフ③
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次に主幹事証券ですが、昨年に続き、野村が9社でトップとなりました。。2位はSMBC日興の8社、3位はみずほの7社と僅差となっています。SBI、先日RIZAPの公募増資の主幹事を行うなど、既にネット証券という位置付けでなく、通常の主幹事候補先として認識されて来ているようです。

 

【申請期売上高は10億円~20億円と100億円以上の二極化 経常利益は底上げの印象】

 

売上高  経常利益

グラフ④

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申請期の売上高見込みですが、昨年上期と大きく変わっていません。従来は売上高50億円未満が全体の半数以上という状況が続いていたのですが、一昨年上期から10億円台と60億円~100億円の2つの山が出来ています。今年は20億円未満が13社でしたが、60億円~1

00億円が6社から2社に半減しました。

 

今年上期で売上が最も小さかったの継続課金の販売・管理プラットフォームの提供をしているビープラッツが55000万円、最も大きかったのは、国内外における紙パルプ卸売業の国際紙パルプ商事が3,828億円でした。

 

一方で経常利益ですが、昨年上期は経常赤字会社は1社でしたが、今回はメルカリが利益非開示としており、従前の業績開示を勘案すると申請期赤字の可能性もあります。

この3年を通してみると、上昇社数が違うことも考慮しなければいけないとは思いますが、概ね利益の山は「左から右」へ拡大している言えそうです。

 

参考までに経常利益が一番大きかったのは、国際紙パルプ商事の25億円、一番小さかったのは印刷及び集客支援のシェアリングプラットフォーム「ラクスル」を中心とした印刷事業、物流のシェアリングプラットフォーム「ハコベル」を中心とした運送事業等、産業毎のシェアリングプラットフォームの創出事業のラクスルの900万円でした。。

 

【予想PER平均は大幅上昇の18.6倍から28.3倍へ】

 

 予想PER

グラフ⑥
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次に公開価格(※初値ではない)による予想PERですが、今回この項目が従来と大きく変わった部分でした。10倍未満の数が昨年上期の7社から2社と大きく減り、20倍~30倍が7社から11社、50倍以上の先が1社から6社となりました。その結果として、平均の予想PERは一昨年上期が16倍、昨年18.6倍とに対して今年は28.3倍と大幅な上昇となりました。100倍超は母数に含んでいませんが、全体的に倍率が高めに評価されていたと考えています。

参考までに、一番低かった予想PERは不動産の売買、賃貸借、管理を行うアズ企画設計の5.6倍、一番高かったのはラクスルで、4838倍でした。

 

これには昨年上期の日経平均が19000円台だったのに対し、今年は22000円台が中心で、株式市場全体が堅調であったことも影響していると思われます。

 

 

【株式時価総額はメルカリの4060億円が最大。7月にはMTGが上場】

 

株式時価総額

グラフ
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公開価格で計算した株式時価総額の分布ですが、50億円未満で18社と半数ですが、100億円~500億円が8社から12社に増加しました。今年上期で一番小さいのは、アズ企画設計の194400万円です。

一方で、一番時価総額が大きかったのはメルカリの4060億円でした。昨年上期はスシローの988億円、一昨年上期はコメダ珈琲店運営のコメダホールディングスの時価総額が858億円で最大でした。どちらもファンド案件であり、オーガニックなIPOであるメルカリの時価総額は評価できるものと考えています。そして、この7月には美容機器、健康機器、化粧品等の企画開発及び製造販売のMTGが約2200億円で登場します。

 

過去の1000億円以上の大型上場は2014年のリクルートホールディングス17994億円、西武ホールディングス5474億円、ジャパンディスプレイ5412億円、すかいらーく3378億円、日立マクセル 1104億円と通期で5社あり、2015年もゆうちょ銀行が65250億円、日本郵政が63000億円、かんぽ生命が13200億円、ベルシステム24ホールディングスが1136億円、デクセリアルズ1008億円の5社ありました。2016年はLINE6929億円、JR九州が4160億円でした。

 

【公開価格割れは昨年上期の4社から2社と半減。公開価格の4倍以上の初値が3社から6社と倍増。】

 

初値騰落率

グラフ⑧
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初値騰落率も昨年同様、底堅い動きです。36社のうち、公開価格割れが一昨年8社、昨年4社、そして今年は2社と急減し、騰落率300%以上(100%で公開価格の2倍)は3社から6

社と倍増しました。

 

参考までに、初値騰落率が一番高かったのは、人工知能(AI)を活用したインターネットサービスの企画・開発・運営のHEROZで、公開価4,500円が初値4,900となり初値騰落率988%、一番低かったのはQBハウス運営のキュービーネットホールディングスで、公開価格が2,250円に対し初値が2,115円と初値騰落率マイナス6%でした。

 

【ファイナンス総額はメルカリの1,306億円億円が最大。オファリングレシオは時価総額の4分の1が目安。】

 

ファイナンス総額

グラフ
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公募・売出を含むファイナンス総額(OA含む)ですが、10億円未満が昨年上期の21社から16社に減少し、一方で1020億円が8社から12社と増加しました。この20億円までで29社となり全体の77%になります。一番小さいのは住宅設備の保証サービス、中古不動産の住宅設備等に対する検査補修サービス及び電子マネー発行サービスを行うおうちのトータルメンテナンス事業並びにBPO事業を手掛ける日本リビング保証の32500万円(公募17800万円、売出 14700万円)で、一番大きいのは、メルカリの 1,306

億円(公募60億円、売出1,366億円)でした。

 

オファリング

グラフ
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次にファイナンス総額と同じくらい重要で、時価総額の何%をマーケットに放出するかという指標のオファリングレシオ「(公募数+売出数)÷発行済株式総数(公募含む)」ですが、これは、昨年上期平均が27.7%、今年上期平均が 27.8%でした。要はIPO時に約4分の1のファイナンスを行っているということになります。これはマーケット環境に関係なく、従来からこの程度の比率になっていますが、グラフで見ると暦年で10%未満が8社から2社と大幅に減少しています。これはおそらく、マーケットの需要が強く、上期のバリュエーションが上昇傾向となっているため、「ファイナンスを少し多めにしておこう」という発行体、主幹事の意図があるものと思われます。

 

今回一番小さいのは、HEROZ5.9%でした。一番大きかったのは、主に仮設資材、物流機器を中心とした金属製品の製造販売を行っている信和で、発行済みの全株を売り出しました。そのほとんどがファンドの売出でした。通常ファンドのエグジット案件になるとオファリングレシオが大きくなり、マーケットで消化出来ず、公開価格割れになる場合が多いのですが、本件も公開価格1,150円が初値1,106円と初値割れとなっています。

 

【まとめ 昨年上期と比較し、バリュエーションが大幅に上昇】

 

全体としては、上場社数、上場市場などは、昨年上期と大きな変化はありません。一方で今年は日経平均が22000円台など、株式市場全体の堅調さにも影響を受け、PER倍率は昨年上期よりも高く、また騰落率も上昇したことから、IPO市場にとっては、比較的安定していたと言えます。

引き続き、下期もIPOに期待したいと思います。