2017年のIPO2年ぶりに増加。時価総額、バリュエーション、初値騰落率は上昇傾向に

 

【ハイライト】

1.  新規上場社数は2016年の83社から90社と2年ぶりに増加。

2.  2017年の大型上場はSGホールディングス(佐川急便)のみ。

3.  時価総額、予想PER、株価騰落率はすべて上昇、その背景としては、発行体の堅調な業績

 

 

1226日で2017年の新規上場案件が全て終了しました。

 

2016年に引き続き、2017年の新規上場マーケットの総括をしてみたいと思います。

 

【新規上場社数は83社から90社に増加。東証一部、二部への上場が増加。】

 

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過去10年の新規上場社数とその年の大納会の日経平均終値をグラフにしました。

 

2008年のリーマンショックを機に日経平均が大きく下がると共に 2009年には新規上場社数は19社まで落ち込みました。それ以降、日経平均は東日本大震災の影響を受けるも、2015年までは新規上場社数は6年連続増加しましたが、2016年に7年ぶりの減少となりましたが、2017年は90社に増加しました。

 

このグラフを見ると新規上場はやはりマーケット環境に大きく影響を受けると言ってよいでしょう。

但し、2017年は日経平均は過去10年で一番高かったのですが、新規上場社数は過去150社を超える水準にまで到達していません。ここは個人的にはもう新規上場が 150社、200社という時代は来ないと考えています。この話はまた別の時にしたいと思います。

 

 上場社数

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2017年の市場別の上場社数は、マザーズが49社と全体の半数以上となっていますが、従来からの3分の2以上ではなくなりました。一方で増加したのはジャスダックスタンダードが2016年の14社から19社に増加し、東証一部が8社から11社、東証二部が5社から6社と増加しました。これは発行体の利益額が大きくなって来ていることが要因と思われます。また、2017年は札幌アンビシャスに2社、名証2部に1社上場しましたが、これは主幹事は全て岡三証券でした。

 

【主幹事は野村の貫録勝ち。SBI13社から8社へ減少。】

 

 主幹事

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次に主幹事証券ですが、2017年は野村が27社と2位の大和の15社を大きく引き離し、貫禄の首位となりました。3位以降はみずほ、SMBC日興と続きますが、2017年は13社と大手の一角に切り込んだSBI8社と5社減少しました。また岡三が2016年のゼロから4社、三菱東京MS、いちよしが各々1社から4社となり、また東洋が1社など主幹事も多様化して来た年といえます。

 

【申請期売上高50億円以上で半数以上 経常利益5億円未満が引き続き、全体の半数以上】

 

売上高  経常利益

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売上高については、大きな変化がありました。従来は売上高50億円未満が半数以上だったのが、2017年は売上高50億円以上で49社と、発行体の大型化の兆しが見えてきました。特に大きく増加したのは、売上高100億円~500億円が2016年の11社から20社とほぼ倍増、また売上高1000億円~5000億円が2社から4社となり、2016年は無かった5000億円以上も1社出ました。

一番売上高が小さいのは、悪性腫瘍に係る医薬品・医療機器の開発・販売を行っているソレイジア・ファーマの42300万円、一番大きいのは佐川急便を運営するSGホールディングスの1兆円でした。

 

一方で経常利益も大きな動きがありました。2016年に続き、経常利益5億未満が50社と半数以上ではありますが、一方で、5億円以上の社数も増加して来ています。特に10億円~50億円の社数が14社から19社と5社増加しました。一番利益が小さかったのは、ソレイジア・ファーマの経常赤字178700万円。一方で経常利益が一番大きかったのはやはりSGホールディングスの600億円でした。

 

2016年との比較ですが、全体で7社の増加数を考慮する必要はありますが、2017年は利益のレンジが全体的に右寄りになり、利益の増加傾向が見られます。明らかに企業業績が伸長している証左と思われます。また、赤字会社が上場して来たのも、株式市場の環境が良いため、成長性が確認できるなら、赤字でも上場しようとの判断だったと思われます。

 

禁煙は申請期売上高 50億円程度、経常利益は1億円以上5億円未満という発行体のイメージでしたが、アベノミクスの恩恵を受けて、新規上場する発行体の業績自体が良くなって来ている印象です。少し転換点かもしれません。

 

 

【予想PERの平均は2016年の16.4倍から18.7倍へ(赤字と100倍超を除く)。ジーニーが470倍、PKSHA Technology111倍と突出】

 

 予想PER

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次に公開価格(※初値ではない)による予想PERですが、PERが一番高かったのは、インターネットメディアの広告収益最大化プラットフォーム「GenieeSSP」を主軸としたアドテクノロジー事業のジーニーの470倍、次に高いのが機械学習技術等を利用したアルゴリズムの開発及びライセンス提供するPKSHA Technology111倍でした。但し一時の、Gunosy5241倍、フリークアウトの6451倍。アキュセラインクの2195倍だったことを勘案すれば、PER倍率はかなり落ち着いて来ています。

 

この予想PER2014年が22.4倍、2015年が19.8倍、2016年が16.4倍と、ずっとバリュエーションが下がって来ていた中で、18.7倍と回復となりました。

 

これは、従来の審査の厳格化と投資家保護の観点から、IPO全体感としては徐々に魅力が薄れつつある状況から、実態の業績の伸長度が強くなって来ていることでの改善と考えています。

 

【株式時価総額は5187億円から8億円まで。】

 

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これも2017年は大きな変化が見られました。公開価格で計算した株式時価総額の分布ですが、従来は2014年が100億円未満で全体の60%2015年は72%2016年は75%と小型化していたのが、2017年は100億円未満で64%と回復して来ました。特に100億円~500億円が16社から25社と大きく伸長しています。一番小さいのは、ダイレクトマーケティング事業(ビッグデータ等の分析、マーケティングシステムの提供、各種プロモーションの企画・政策・コンサルティング)のフュージョンで82100万円でした。本件は札幌アンビシャス銘柄であり、マザーズの上場基準である株式時価総額10億円を超えられないための上場市場選定と思われます。

 

また、時価総額で一番大きかったのは、SGホールディングスの5187億円で、次には「スシロー」ブランドでその回転すし全国チェーン展開のスシローグローバルホールディングスの988億円でした。2016年はLINE6929億円、九州旅客鉄道の4160億円がありました。2015年は日本郵政3社の株式時価総額は全て1兆円以上で、その次はベルシステム24ホールディングスの1136億円、デクセリアルズの1080億円でした。2014年はリクルートホールディングス17994億円以下、西武ホールディングス5474億円、ジャパンディスプレイ5412億円、すかいらーく3378億円、日立マクセル 1104億円だったことを比較すると、2017年は1000億円以上の大型案件の数が少なかった年でもありました。

 

【初値騰落率は828敗。最大はトレードワークスの2200円が13600円。騰落率518%

 

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90社の公開価格に対する初値の騰落率は、初値が公開価格を上回ったケースが82社、公募割れが8社でした。2016年が67151分けだった2016年から勘案すると、大きく改善されました。2017年は騰落率が100%~200%(公開価格の2倍~3倍)となった社数が2016年の16社から29社に大幅に増加しました。

 

【ファイナンス総額はSGホールディングスの1276億円が最大。オファリングレシオは引き続き株式時価総額の4分の1が目安。】

 

ファイナンス総額

 

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公募・売出しを含むファイナンス総額(OAは含まず)ですが、10億円未満が37社、20億円未満で 56社と全体の60%近くになりましたが、従来からの70%程度から比較すると総じてファイナンス額は増加傾向にあります。一番小さいのはビジネスSNSWantedly」の企画・開発・運営を行うウォンテッドリーの15000万円(うち公募4500万円)、一方で一番大きいのは、SGホールディングスの1276億円(公募なし)でした。

 

 オファリングレシオ

 

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次にファイナンス総額と同じくらい重要で、株式時価総額の何%をマーケットに放出するかという指標のオファリングレシオ「(公募数+売出し数)÷発行済株式総数(公募含む)」ですが、これは平均が27.1%でした。2016年が25.3%2015年が25.9%、2014年は26.1%だったので、若干上昇しています。但し、概ね新規上場時に約4分の1のファイナンスを行っているということになります。これはマーケット環境に関係なく、従来からこの程度の比率になっています。

 

今回一番小さいのは、ウォンテッドリーの3.3%でした。そして一番大きかったのは、顧客満足度・従業員満足度の向上のためのリサーチ業務及び経営コンサルティングに関する業務のMS&Consutingが、95.4%で、時価総額58億円のうち、実に55億円をマーケットで売却することになりました。結果として、公開価格1280円に対し、初値は1250円となり、初値割れなっています。

 

【まとめ 件数増加、バリュエーション、騰落率は上昇、IPOマーケットは新たなステージへ】

 

2017年のIPOマーケットは話題性のあるものはなかったものの、安定的な良いマーケットだと思っています。一つにはマクロ環境では、まだ今一つ結果が見えづらい環境の中で、新規上場する発行体は売上高、経常利益等、しっかりと申請期の業績を作って来たこと、そして、それを好感し、マーケットも旺盛な需要が創生された結果、2016年比でバリュエーション、騰落率が大きく改善されました。今まで2年連続で停滞気味だったIPOマーケットは2017年に新たなステージ入ったと考えており、この傾向は2018年も続くと考えています。

 

2018年は2017年に上場延期となったメルカリや、満を持してのQBハウスなど、楽しみなネームの上場が噂されており、引き続きIPOマーケットの活況を期待したいと思います。

 

拙い文章ではありましたが、最後までお読みいただき、まことにありがとうございました

2018年も何卒、よろしくお願い申し上げます。

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