【東芝メモリの売却が間に合わない場合、東芝は公募増資を行う。】

 

一連の東芝問題で大きな動きがあった。そして、これで良いのかという憤りもある。

 

1011日に東京証券取引所(以下、東証)は東芝の「特設注意市場銘柄の指定解除及び監理銘柄(審査中)の指定解除」を行った。

 

特設注意市場銘柄とは、「有価証券報告書等の「虚偽記載」や不適正意見、上場契約違反等の上場廃止基準に抵触するおそれがあったものの、金融商品取引所の審査の結果、影響が重大とはいえないとして上場廃止に至らなかった銘柄のうち、内部管理体制等の改善が必要であり、継続的に投資家に注意喚起するべく、取引所が指定する銘柄」とされており、これはオリンパス事件の時に新たに出来た制度である

 

東芝は2015915日に東証より「特設注意市場銘柄」に指定され、更には20161219日に指定継続となっていた。また、当該指定から16か月を経過した、2017315日に、東芝から改めて、内部管理体制確認書が提出され、東証はその内容を審査していた段階での、今回の「上場維持」との判断になる。これで東芝は2年余りの「粛清期間」を終え、晴れて「普通の銘柄」となった。

 

東芝表.png

 

あまりにも唐突である。

というのが、筆者の感想である。なぜ、このタイミングなのか?

 

そして、東証はなぜ、いけしゃあしゃあと、

 

「同社の内部管理体制等については、相応の改善がなされたと認められました。したがって、同社株式の特設注意市場銘柄指定を解除することとします。また、これに伴い、監理銘柄(審査中)の指定を解除します。」

 

という結論になったのかを考えてみたい。

 

■これのどこが、「相応の改善がなされた」と認められたのか。

 

従来、特設注意銘柄の指定解除のための内部管理体制の運用期間は1年であり、東証はその運用の結果を審査した上で、特設注意銘柄の指定解除を行う。しかし、指定延長を行い、この315日に、内部管理体制確認書が提出された後に何が起きたか?

 

それは、17/3期第三四半期報告書の度重なる開示遅延と、17/3期の有価証券報告提出遅延、そして、定時の株主総会で、決算が提示されなかったこと自体、極めて異例であるし、厳密には法令違反である。会社法で、決算提示は「定時」の株主総会と決められている。

 

(計算書類等の定時株主総会への提出等)

438条 次の各号に掲げる株式会社においては、取締役は、当該各号に定める計算書類及び事業報告を定時株主総会に提出し、又は提供しなければならない。

そして、これ以外にも、東芝メモリ売却の件で、良い条件を引き出す術だったとは言え、マネジメント層の意思決定のダッチロールは目に余るものだった。

 

この状況下、普通に判断すれば、最低1年、今年度の株主総会(18/3期)までの内部管理体制の運用を確認するのが、当然である。

 

しかも、東芝はこの10月24日に臨時株主総会で、17/3期の決算承認と、10名の取締役選任と、東芝メモリの株式売却を決議する予定である。

 

いろいろと内部管理体制改善進捗のコメントは記載されているが、実際にその運用がチェック出来ているかは極めて、不透明である。

 

実はこの夏から、東証の判断が少し疑問に思っていた。

 

市場第一部銘柄から市場第二部銘柄への指定替え:(株)東芝

 

東証は17/3期決算が開示された直後の81日に、既に債務超過になっているとして、形式基準を適用し、市場第二部へ指定替えとしている。17/3期決算はこの1024日の株主総会で承認して初めて確定するものだ。

 

確かに、会社法では、「取締役会設置会社で、かつ、会計監査人設置会社」については、取締役会の承認を受けた計算書類が法令および定款に従い株式会社の財産および損益の状況を正しく表示しているものとして、法務省令で定める要件に該当する場合には、定時株主総会の承認が不要となる。実際に東芝も、16/3期は決算を決議でなく、報告事項にしている。

 

しかし、株主総会へ正式な報告さえ行われていない、決算を以って、市場第二部に指定替えするというのも、理不尽そのものであろう。

 

しかし、なぜこのタイミングなのか。

今回東芝メモリは、日米韓連合に売却することを決定したが、米ウエスタンデジタル(以下、WD)との係争は続いており、その進捗如何では、来年3月までの売却が出来ないことになり、おそらく2期連続債務超過となるため、形式基準で自動的に上場廃止となる。本来なら、仮に内部管理体制が改善されていたとしても、形式基準の上場廃止リスクを抱えている中で、このタイミングで特設注意銘柄解除を行うことは、逆に投資家保護の観点からおかしいのではないか。

 

■ここに来て大きくストーリーが見えてきた。

 

そして、今回の一連の東証の判断から透けて見えるものが出てきた。

私の見立てはこうだ。

 

東芝メモリの売却が間に合わない場合、東芝は第四四半期に公募増資を行う。

 

特設注意銘柄では、公募ファイナンスは出来ない。私は今回の指定解除は、東芝が公募ファイナンスを行うための下地作りだと考えている。

 

東芝はこの第一四半期の純利益は503億円。今期の業績予想は純利益2300億円である。

業績通りなら、17/35529億円の債務超過が、3229億円に改善され、仮に5000億円程度の公募増資が出来れば、東芝メモリの売却が間に合わなくても、上場は維持される。

 

というよりも、東芝メモリさえ、売却する必要はなくなる。もともと東芝メモリは今後十分に利益を稼げる事業であり、わざわざ売却する理由などない。もちろん日米韓連合に500億円の違約金は払う必要はあるが、そこがボトルネックになるとは考えにくい。引き続き、業績は安泰となる。

 

もちろん、東証が自分でその絵を書いたとは思わないが、意地でも上場維持したい東芝に対して、大きなヒントを与えたことは間違いないだろう。

 

もし東芝メモリを売却しないとの判断が出れば、公募増資は十分可能だと思われる。

 

東芝にしてみれば、万々歳だが、東証の今回のこのタイミングでの判断はどうなのか。

外から何か圧力がかかったとは思いたくないが、東証はこのストーリーを明らかに予見できる立場である。この理解し難いタイミングでの特設注意銘柄解除が、東芝の上場維持を「忖度」したものであれば、東証の信頼はこの上なく失墜するだろう。

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