さて、ちょっと遅くなりましたが、今年も半分が過ぎました。今回は2017年上半期のIPOマーケットの総括をしてみたいと思います。 

 

【上半期新規上場社数は39社、市場はマザーズが圧倒的。 札幌アンビシャスに2社】

 

 日経平均 

過去10年のIPO社数とその年の大納会の日経平均終値をグラフにしました。2017年は6月30日終値現在です。


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先ずは2007年の世界的なサブプライム問題表面化より、日経平均とIPO社数は下げに転じ、2008年のリーマンショックを機に日経平均が大きく下がると共に、 2009年にはIPO社数は19社まで落ち込みました。それ以降、日経平均は東日本大震災の影響を受けるも、IPO社数は7年連続で増加しましたが、昨年通期は上場社数が前年を下回りました。 今年は上半期で39社が上場しており、昨年上期の40社と同水準ですが、その規模、バリュエーション3年ぶりに上昇に転じました。

 

このグラフを見るとIPOはやはりマーケット環境に大きく影響を受けると言ってよいでしょう。但しIPO社数はかつての150社を超える水準にはほど遠い状況です。

 

 

上場社数
 

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上半期の市場別のIPO社数は、マザーズが22社と全体の半数以上となっており、また昨年上期も25社と、近年マザーズ上場の傾向が強くなっています。また今年は札幌アンビシャスに2社のIPOがありました。 ダイレクトマーケティングのフュージョンとIoTのエコモットいう発行体ですが、どちらも北海道に本社があり、主幹事は両方、岡三証券だったのが、興味深いです。

 

【主幹事トップは野村14社、2位は大和とSBIで6社】

 

 主幹事証券 

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次に主幹事証券ですが、昨年上期野村3位だった野村が2年ぶりに14社でトップに返り咲きました。2位は大和とSBIが6社と同数です。特にSBIが一昨年上期4社、昨年上期5社、今年6社と着実に主幹事社数を伸ばしてきており、既にネット証券という位置付けでなく、通常の主幹事候補先として認識されて来ているようです。また、前述のとおり岡三が札幌アンビシャス銘柄2社を上場させています

 

【申請期売上高は10億円~20億円と60億円以上の二極化 経常利益昨年上期比小粒化】

 

売上高  経常利益 


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申請期の売上高見込みですが、昨年上期と大きく変わっていません。一昨年上期までは売上高50億円未満が全体の半数以上という状況が続いていたのですが、昨年上期から10億円台と60億円~100億円の2つの山が出来ました。今年は10億円~20億円が8社と、60億円~100億円が11社から6社に半減した代わりに、100億円~500億円が8社から10社と若干大型に振れつつあります。今年上期で売上が最も小さかったのは、悪性腫瘍に係る医薬品・医療機器の開発・販売を手掛けるソレイジア・ファーマが4億2300万円、最も大きかったのは、家庭日用品、インテリア用品、住宅設備機器等の総合小売業及び住宅リフォーム等の事業のLIXILビバが1,836億円でした。

 

一方で経常利益ですが、昨年上期赤字はありませんでしたが、今年はソレイジア・ファーマが経常赤字17億8700あり、また経常利益1億円未満も2社ありました。また経常3億円までで20社あり、全体の半数以上となっています。これは2億円~3億円のレンジが3社から10社に大きく増えたことによるものです。昨年上期に比べ利益のレンジは広がり小粒化しているといえます。

 

参考までに経常利益が一番大きかったのは、LIXILビバの106億円でした。

 

【予想PER平均は昨年上期16倍から18.6倍へ。】

 

 予想PER 


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次に公開価格(※初値ではない)による予想PERですが、これは昨年上期と比較して、若干上振れの感じが見受けられます。10倍未満の数が昨年上期の11社から8社と減り、20倍~30倍が4社から7社、50倍以上の先が1社となりました。その結果として、平均の予想PERは一昨年上期21倍、昨年上期が16倍、今年は18.6倍と戻し、3年振りの上昇となりました。

参考までに、赤字のソレイジア・ファーマを除き、一番低かった予想PERは住宅リフォーム事業の安江工務店の6.0倍、一番高かったのはCGS事業のうるるで、62.9倍でした。

 

これには昨年上期の日経平均が1万5000円台から1万7000円台だったのに対し、今年は1万9000円台が中心で、直近では2万円を超しており、株式市場全体が堅調であったことも影響していると思われます。

 

 

【株式時価総額はスシローグローバルホールディングスの988億円が最大。7月にはメルカリが上場申請との観測】

 

株式時価総額


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公開価格で計算した株式時価総額の分布ですが、50億円未満で19社と約半数、100億円未満で28社と全体の 70%以上になります。今年上期で一番小さいのは、フュージョンが8億 2100万円です。マザーズの上場基準の時価総額10億円ですが、フュージョンが上場した札幌アンビシャスの上場基準はありません。

 

一方で、一番時価総額が大きかったのはスシローグローバルホールディングスの988億円でした。スシローは2003年に一度東証二部に上場しましたが、業績不調に伴い、2008年にユニゾンキャピタルが全株取得し上場廃止となり、その後、2012年にベルミラアドバイザーズ買収して、今回再上場となります。昨年上期はコメダ珈琲店運営のコメダホールディングスの時価総額が858億円で最大でした

 

過去の1000億円以上の大型上場は2014年のリクルートホールディングス1兆7994億円、西武ホールディングス5474億円、ジャパンディスプレイ5412億円、すかいらーく3378億円、日立マクセル 1104億円と通期で5社あり、2015年もゆうちょ銀行が6兆5250億円、日本郵政が6兆3000億円、かんぽ生命が1兆3200億円、ベルシステム24ホールディングスが1136億円、デクセリアルズ1008億円の5社ありました。昨年はLINEが6929億円、JR九州が4160億円であり、それに比べれば、今年は現状メルカリ以外は聞こえて来ません。そういった意味では、毎年徐々に規模も社数でも小さくなっているのが、気になります。

 

【公開価格割れは昨年上期の8社から4社と半減。公開価格の2倍以上の初値が10社から21社と倍増。】

 

初値騰落率


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初値騰落率も昨年上期までと大きな変化が出ました。39社のうち、公開価格割れが8社から4社半減し、騰落率100%以上(100%で公開価格の2倍)は10社から21社と倍増しました。

 

参考までに、初値騰落率が一番高かったのは、クラウドERP(MA-EYES)の開発および販売を行うパッケージ事業のビーブレイクシステムズで、公開価格格1,670円が初値7,700円となり初値騰落率361%、一番低かったのはLIXILビバで、公開価格が2,050円に対し初値が1,947円と初値騰落率マイナス5%でした。

 

【ファイナンス総額はスシローグローバルホールディングスの688億円億円が最大。オファリングレシオは時価総額の4分の1が目安。】

 

ファイナンス総額


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公募・売出を含むファイナンス総額(OAは含まず)ですが、10億円未満が昨年上期の16社から21社に増加し、一方で10~20億円が17社から8社と増加しました。この20億円までで29社となり全体の74%になります。一番小さいのはフュージョンの1億8200万円(公募1億3700万円、売出 4500万円)で、一番大きいのは、スシローグローバルホールディングスの 688億円(すべて売出)でした。

 

オファリング 

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次にファイナンス総額と同じくらい重要で、時価総額の何%をマーケットに放出するかという指標のオファリングレシオ「(公募数+売出数)÷発行済株式総数(公募含む)」ですが、これは、昨年上期平均が22.3%、今年上期平均が 27.7%でした。要はIPO時に約4分の1のファイナンスを行っているということになります。これはマーケット環境に関係なく、従来からこの程度の比率になっていますが、グラフで見ると10%未満が8社から2社と大幅に減少しています。これはおそらく、マーケットの需要が強く、上期のバリュエーションが上昇傾向となっているため、「ファイナンスを少し多めにしておこう」という発行体、主幹事の意図があるものと思われます。

 

今回一番小さいのは、再生可能エネルギー発電事業、再生可能エネルギー開発、運営事業のレノバの6.6%でした。一番大きかったのは、 コミック配信サービス「マンガの王国」の運営等のビーグリーの79.9%です、そのほとんどがファンドの売出でした。通常ファンドのグジット案件になるとオファリングレシオが大きくなり、マーケットで消化出来ず、公開価格割れになる場合が多いのですが、本件も公開価格1,880円が初値1,881円とほぼ同額となりました。

 

【まとめ 昨年上期と比較し、上場社数、市場に大きな変更はなし

 

全体としては、上場社数、上場市場などは、昨年上期と大きな変化はありません。一方で今年は日経平均が再度2万円を超えるなど、株式市場全体の堅調さにも影響を受け、PER倍率は昨年上期よりも高く、また騰落率も上昇したことから、IPO市場にとっては、比較的安定していたと言えます。

一方で、ここまでIPO市場が回復して来たその牽引役だった安倍政権に、不安定さが出てきたことから、下期は若干不透明な部分も出てきそうです。

 

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