4月ですね。

この春から周りに国内大学院MBAに通われる方も多いということで、

今年も自分の経験から、お勧めの2017年度版ファイナンス系参考図書12冊を記載してみました。今回は  3冊入れ替えました。ご参考になれば幸いです。

 初心者向け

 「入門ビジネスファイナンス」西山茂著

私にとってこの本の位置付けは変わりません。先ずはここからということで、とてもわかりやすいです。2008年の発刊なので、ちょっと時間が経っており、本来であれば、そろそろ入れ替えを行いたいところですが、正直、これ以上初心者向けの書籍はないとの印象です。これは初めてファイナンスを学ばれる方にお勧めです。  NPVに関する詳細な説明、たとえばゼロ年目には割引率を掛けない等のアドバイスがされており、薄目の本なので、 2  日間くらいで一気に読めるかもしれません。ぜひ著者に改訂版をお願いしたいところです。

「ファイナンスの哲学 資本主義の本質的な理解のための10大概念」堀内勉著

今回新規の追加になります。昨年の6月に出版されましたが、ファイナンスをいじるというよりはファイナンスに対する考え方が記されています。

おカネ(money)、信用(credit)、倫理(ethics)/信頼(trust)、利子(interest)、利益(profit)、価値(value)、市場(market)、成長(growth)/進歩(progress)、時間(time)、資本(capital)/資本主義(capitalism)について、説明していますが、全体を通して流れているメッセージは「ファイナンスの唯一無二の解ではなく、ツールの一つとファイナンスを使いこなす「哲学」が重要であるということです。ファイナンスが苦手な方は、この10の考え方から入ることで、その後がスムーズに進むかもしれません。

 

中級者向け 

「企業価値評価 第6版 上下」マッキンゼー著  /本田桂子訳 

昨年に第6 版が発売されました。現在私が実務を行う上で考え方のベースになっている書籍です。ブリーリー・マイヤーズの「コーポレートファイナンス 上 /下」に比べ実践的であり、バリュエーション方法については下巻で赤字会社の場合、金融機関の場合等個別業種で記載されています。今回からは第17章「事業単位ごとの企業価値評価」もかなり詳細に書かれており、事業ポートフォリオ評価を行う上でも重宝しますし、翻訳も秀逸です。最近ではKindle版もあり、携帯が楽になっているようですね。 
 

「バリュエーションの教科書」森生明著

今回新規の追加になります。昨年の5月に発売されました。現在発刊されているファイナンスの教科書の中では、一番網羅的であり、理論・実務両面において極めてバランスがとれた参考書だと思われます。書かれている様々な事象、ケースにおいて、全体に流れているバリュエーションの基本である「 PV = C/(rg) DCFとマルチプルは同根」というキーメッセージをブラすことなく、最後までイシューとして押さえ続けている姿勢は素晴らしいです。またコングロマリットディスカウント、総合電機、敵対的TOB 等の個別ケースの説明も非常に参考になります。

 

上級者向け

「企業価値評価のQ&A第3版」プルータス・コンサルティング著

企業価値評価で悩む資本コストのサイズプレミアム、コントロールプレミのアム、永久成長率などについて、かなり詳細な説明がなされています。プルータスは上場企業の大型 M&A TOB の株価算定やフェアネスオピニオンを行っているコンサル会社なので一見の価値ありです。
 

「M&Aと組織再編のすべて」Donald M. DePamphilis / KPMG FAS訳

今回新規の追加になります。この3月に発売となりました。かなり分厚くお値段もそれなりにしますが、ファイナンスを仕事にしている方にとっては、必要な書籍だと思います。

特に非上場企業に対するサイズプレミアム、非流動性プレミアムについて、データの中央値から、一定のロジックでリスクプレミアムを加減する考え方は合理的であり、いつもある意味最後は「なあなあ」で決めていたディスカウントについて、明解な算式を示したことについて意義があります。

 

テーマ別推薦書

「スチュアードシップ・コード時代の企業価値を高める経営戦略」ニッセイアセットマネジメント会社著

近年注目されているスチュアードシップ・コード ですが、一昨年12 月に出版された本書は、機関投資家であるニッセイアセットマネジメントのファンドマネージャー、アナリストが各社の ROE 、配当性向、企業価値を算定し、長期の事業計画(年)を作成、その際のプロの着目点やノウハウが詰まっており、非常に価値のある良書だと思います。
 

「経営戦略のコーポレートファイナンス」砂川伸幸、川北英隆、杉浦秀徳、佐藤淑子著 

これは以前出版された「日本企業のコーポレートファイナンス」の続編にあたり、これは日本企業のファイナンスに特化し、ケーススタディが多く「東武鉄道のスカイツリー事業」や「富士フィルムホールディングス事業転換とファイナンス」等、資本コストや  βの情報が集約されており、経営戦略と財務戦略の整合性を俯瞰する上では非常に参考になると思います。投資銀行の若手にはお勧めです。
 

「日本のM&A  理論と実践の研究」 服部暢達著

M&A の方法等、基本的な説明も書いてありますが、特筆すべきは過去の実際のディールに対して、筆者の主観としてのM&A  の成功例と失敗例に分けて執筆されていることでしょうか?

成功例としてはブリジストンによるファイヤストン買収、日本たばこによるRJRインターナショナル買収、ロシュによる中外製薬買収等があり、失敗例としては、古川電工によるルーセント光ファイバー事業買収、第一三共によるランバクシー買収、パナソニックによる三洋電機買収等が書かれています。全部で  30ケースが記載されていますが、もっとケースを減らして、深く分析した方が良かったかもしれませんが、これはこれでケースの収集・評価として参考になります。


「起業のファイナンス  増補改訂版 ベンチャーにとって一番大切なこと」磯崎哲也著

2010
10月に発刊され、起業系ではすでにスタンダードになっていますが、2015年にコーポレート・ガバナンスの追加を中心とした増補改訂版が出版されました。従来からの新規上場するための資本政策に留まらず、創業経営者が  VCから資金を調達するために、どこに注意しなければならないか、また現状日本の新規上場では種類株は上場前に普通株に転換されてしまため、なかなか種類株の資本政策がわかりにくい中、種類株をどの様に運用していけばいいかなど、非常に参考になります。


「資本・業務提携の実務第2版」西村あさひ事務所著

これは昨年の9月に第2版が出ました。アドバイザリー業務や自ら投資業務を行う中で、実務として非常に重宝しております。資本提携としてのマジョリティ出資とマイノリティ出資との違いによる、業務提携の内容の濃淡や、提携解消時の株式買取請求、各権利の移転等の実務にとても有効です。改めて  M&Aは突き詰めれば契約に収斂されると思った次第です。

 

「企業価値向上の事業投資戦略」野村證券金融工学センター著

2011 
3月に発刊されましたが、コングロマリット化した大企業が事業部のポートフォリオ評価を行う上で、簡便で有効な書籍だと思います。エコノミックプロフィット法を使い、  NOPATからWACC× 投下資本を引くことで、その事業の価値が拡大しているのか毀損しているのか測ることが可能です。但し実際には社内のデータを持っている財務・企画の人間で無い限り、有価証券報告書上のセグメント規模より小さい単位を評価するのは難しいかもしれません。もう時間も経っているのでそろそろ改訂版が欲しいところです。

 

今年も改めて書きますが、

ファイナンスは非常に面白い学問です。カネに色はついていません。
  私がファイナンスに魅せられている理由は、極めてロジカルでダイナミックだからです。

よく議論をしていると、答えは2つあるとか  3つあるとか、実は答えはないとかいう話があったりしますが、少なくともファイナンスや数字については、答えはある一定の領域しかないと思っています

「エコノミクスはすべてに優先され、マーケットは常に正しい。」

本来はこのぐらいの価値があるはずと言われていたとしても、今あるマーケットの姿が、紛れもない真実であり、唯一の答えです。起こることはすべて正しいのです。

戦略は正しい。きちんと人材の分野も押さえていて、高い志もある。
とは言っても、そういったものを全部つなぎ止めるベースとなるべきものは、
やはりロジカルな数字です。

数字があるからこそ、こういった話ができると思うのです。

数字を抜きにして、「企業は人です」だけで話を全部済ませてしまうのは、
どうも自分としては違和感が残ります。

 もちろん、数字が全てというつもりはありませんが、  戦略は当然ファイナンスとつながり、志や人の活かし方といった話ができるのは、その前にきっちり数字に強くなってからではないかと思うのです。

この日本からファイナンスに強いMBAがたくさん生まれて欲しい。

そのために自分ができることを、引き続きやりたいと考えています。 

 今後ともよろしくお願いします。

引き続き参加者募集中!  Hiro の投資銀行サロン

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