さて、6月で今年も半分が過ぎました。今回は2016年上半期のIPOマーケットの総括をしてみたいと思います。

 

【上半期新規上場社数は40社、市場はマザーズが圧倒的。 1年半ぶりに名証2部銘柄も】

 

 日経平均

過去10年のIPO社数とその年の大納会の日経平均終値をグラフにしました。2016年は6月30日終値現在です。
 

グラフ①

 

先ずは2007年の世界的なサブプライム問題表面化より、日経平均とIPO社数は下げに転じ、2008年のリーマンショックを機に日経平均が大きく下がると共に、 2009年にはIPO社数は19社まで落ち込みました。それ以降、日経平均は東日本大震災の影響を受けるも、IPO社数は6年連続で増加しており、昨年は92社が上場しました。 今年は上半期で既に40社が上場しており、昨年の43社と同水準ですが、その規模、バリュエーション、ファイナンス総額はかなり変化してきています。

 

このグラフを見るとIPOはやはりマーケット環境に大きく影響を受けると言ってよいでしょう。但し日経平均は今年は2007年と同水準ではありますが、IPO社数は150社を超える水準にはほど遠い状況です。

 

 

上場社数

グラフ②

上半期の市場別のIPO社数は、マザーズが25社と全体の3分2近くとなっており、また昨年も31社と、近年マザーズ上場の傾向が強くなっています。また今年は1年半ぶりに名証2部にIPOがありました。 丸八ホールディングスという発行体ですが、丸八真綿という名前の布団寝具が有名で、静岡県浜松市が発祥となります。

 

【主幹事トップは大和、みずほが横並び、野村は3位】

 

 主幹事証券

グラフ③

次に主幹事証券ですが、昨年野村13社だった野村が7件で3位となり、替わって大和とみずほが9社と同数トップとなります。みずほが上半期でトップだったのは、最近では記憶がありません。またSBIも既に5社となっており、昨年上期の4社に続き、既にネット証券という位置付けでなく、通常の主幹事候補先として認識されて来ているようです。また、昨年上期1社だった東海東京が3社と好調です。

 

【申請期売上高は10億円~20億円と60億円以上の二極化 経常利益10億円超が昨年の2倍の12社】

 

売上高  経常利益

グラフ④
グラフ⑤

 

申請期の売上高見込みですが、昨年までとは少し分布が変わってきました。昨年までは売上高50億円未満が全体の半数以上という状況が続いていたのですが、今年は10億円~20億円が10件と、60億円~100億円に11件と二つの山が出来ました。また、20億円から50億円までは、どの階層も昨年より件数が少なく、一方で60億円以上の売上高については、すべて昨年上期より件数が上回っており、昨年と比較して売上規模が二極化となっています。今年上期で売上が最も小さかったのは、ゴルフ事業のASPサービス、ゴルフ情報誌「月刊バリューゴルフ」の発行等を手掛けるバリューゴルフが9億9300万円、最も大きかったのは、電子機器の受託製造・開発を行うEMS事業のユー・エム・シー・エレクトロニクスが、1,152億円でした。

 

一方で経常利益ですが、昨年上期は赤字が3社あったのが、今年上期赤字はありませんでした。経常利益5億円までで22社あり、全体の半数以上となっています。昨年上期はこの5億円未満で全体の3分の2でした。そして今回注目すべきは、経常利益10億円超が12社と昨年上期の6社の2倍になっていることです。これは、昨年のgumiショック以降、主幹事証券、証券取引所の審査が申請期の業績の精査を行った結果、それなりの売上規模、経常利益の発行体を中心に審査が通ったということが言えると思います。

 

参考までに一番経常利益が小さかったのは バリューゴルフの1億3100万円、経常利益が一番大きかったのは、富山第一銀行の77億円でした。

 

【予想PER平均は昨年の21倍から16倍へ。潮目が変わったと見る】

 

 予想PER

グラフ⑥

次に公開価格(※初値ではない)による予想PERですが、これも昨年上期と比較して、変化が見られます。10倍未満の数が昨年の5社から11社のと2倍以上となり、20倍以上の先は減少し、50倍以上の先はゼロとなりました。昨年上期で一番予想PERが高かったのは、 gunosyの5,241倍、ジグソーの74.5倍などがありましたが、現状は株式市場全体の伸び悩みがある中で、バリュエーションはコンサバな評価をしているということなのでしょう。その結果として、平均の予想PERは昨年21倍だったのが、今年上半期が16倍と大きく下がっています。一昨年が22.1倍だったので、予想PERの下降は3年連続となります。

参考までに、一番低かった予想PERは家庭用洗剤等の日用品を企画販売する昭栄薬品の1.6倍、一番高かったのはPXBマウスを用いた受託試験サービスのフェニックスバイオでした。

 

今までこの3年程度、予想PERは20倍程度を見ていましたが、ここで一旦潮目が変わったとの認識をしています。

 

 

 

【株式時価総額はコメダの858億円が最大。7月にはLINEが約6000億円で上場】

 

株式時価総額

グラフ⑦

公開価格で計算した株式時価総額の分布ですが、50億円未満で19社と約半数、100億円未満で29社と全体の 75%になります。今年上期で一番小さいのは、新築戸建分譲事業のアグレ都市デザインが14億 1900万円です。昨年は札幌アンビシャス上場のヘリオスが4億円でした。マザーズの上場基準の時価総額が10億円ですが、札幌アンビシャスの上場基準はありません。

 

一方で、一番時価総額が大きかったのはコメダ珈琲店FC運営のコメダホールディングスが858億円でしたが、7月にはLINEが時価総額約6000億円で上場予定となっています。1000億円以上の大型上場は一昨年通期でリクルートホールディングス1兆7994億円、西武ホールディングス5474億円、ジャパンディスプレイ5412億円、すかいらーく3378億円、日立マクセル 1104億円と通期で5社あり、昨年通期もゆうちょ銀行が6兆5250億円、日本郵政が6兆3000億円、かんぽ生命が1兆3200億円、ベルシステム24ホールディングスが1136億円、デクセリアルズ1008億円の5社ありました。それに比べれば、今年は現状LINEのネーム以外聞こえてきません。そういった意味では、今年は規模感でも例年に比べ小さいかもそれません。

 

【公開価格割れは昨年上期の3社から8社と激増。初値騰落率1位はグローバルウエイの公開価格2,960円が初値14,000円】

 

初値騰落率

グラフ⑧

初値騰落率も昨年までと大きな変化が出ました。40社のうち、公開価格割れが8社となり、昨年上期の3社の2倍以上となりました。公開価格に対する初値の騰落率は初値が公開価格を上回ったケースは31社、公開価格割れが8社。公開価格と同じが1社でした。

そして、騰落率10%までが7社と、これも昨年上期の4社から増加しました。

この7社はバリュエーションが低いものもあれば高いものもあり、オファリングレシオ「(公募数+売出数)÷発行済株式総数(公募含む)」が高いものも低いものもあり、今後の分析が必要です。

IPO銘柄だからといって、必ずしも初値が高くなる状況ではなくなって来ています。

 

参考までに、初値騰落率が一番高かったのは、働く人のための情報プラットフォーム「キャリコネ」を運営しているグローバルウエイで、公開価格2,960円が初値14,000円となり初値騰落率373%、一番低かったのはユー・エム・シー・エレクトロニクスで、公開価格が3,000円に対し初値が2,480円と初値騰落率マイナス17.3%でした。

 

【ファイナンス総額はコメダのホールディングスの 601億円億円が最大。オファリングレシオは時価総額の4分の1が目安。】

 

ファイナンス総額

グラフ⑨

公募・売出を含むファイナンス総額(OAは含まず)ですが、10億円未満が昨年上期の21社から16社の減少し、一方で10~20億円が12社から17社と増加しました。この20億円までで33社となり全体の82%になります。一番小さいのは食料品等の製造・販売業を行うヨシムラ・フード・ホールディングスの2億6400万円(公募2億4300万円、売出 2100万円)で、一番大きいのは、コメダホールディングスの 601億円(すべて売出)でした。

 

オファリング

グラフ➉

次にファイナンス総額と同じくらい重要で、時価総額の何%をマーケットに放出するかという指標のオファリングレシオ「(公募数+売出数)÷発行済株式総数(公募含む)」ですが、これは、昨年上期平均が25.6%、今年上期平均が 22.3%でした。要はIPO時に約4分の1のファイナンスを行っているということになります。これはマーケット環境に関係なく、従来からこの程度の比率になっていますが、グラフで見ると10%未満が1社から8社と大幅に増加しています。これはおそらく、マーケットの需要が弱く、上期のバリュエーションが下降傾向となっているため、「ファイナンスは少なめにしておこう」という発行体、主幹事の意図があるものと思われます。

 

今回一番小さいのは、ヨシムラ・フード・ホールディングスの6.9%でした。一番大きかったのは、 コメダホールディングスの70.1%です、しかもそのすべてがMBKパートナーズの売出です。通常ファンドのイグジット案件になるとオファリングレシオが大きくなり、マーケットで消化出来ず、公開価格割れになる場合が多いのですが、本件も案の定、公開価格1,960円が初値1,867円と公開価格割れとなりました。

 

【まとめ gumiショック以降、売上規模、経常利益は増加傾向、バリュエーションは低めとなり、今後もこの状態は続く】

 

昨年春先のgumiの業績下方修正による、いわゆる「gumiショック」の結果、その後の主幹事証券、証券取引所の審査は、申請期の業績見込みの精緻さを中心に審査をしてきました。その結果、今年年初の株価下落も影響してか、IPOする発行体は昨年上期と比較して、売上規模、利益が大きめの会社が多くなりました、一方で予想PERは大きく下がり、しかも公開価格割れした発行体も多くなるなど、マーケットとしては、少し慎重な姿勢が見られます。

 

下期についても、期待されていたLINEの予想PERは20倍~24倍であり、普通のディールになってしまいました。そういった意味では、これからのIPO環境にとって、今後これといった良い材料があるわけではなく、昨年と比較して、件数はともかく、手堅い水準のファイナンスが続くと思われ、チャレンジングなIPOは困難かもしれません。

いずれにしろ、今年後半もIPOマーケットに注視してしたいと思います。

 

 

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