3月1日である。

すでにプロ野球のオープン戦が始まっているが、
我がスワローズのオープン戦は4連敗中である。
私は関根監督以来、25年以上のスワローズファンだ。

銀行員のころ、
戸田支店に勤務しており、近くに2軍宿舎があった。

その後、野村監督時代の中心選手となる選手が、
入団した時は、契約金の預金交渉などもお願いしに行ったり、
時々、店頭には選手も来店していたのを覚えている。

その頃、仕事が早帰りの日は、
夕方からよく神宮に試合を見に行っていた。
店頭で見覚えのある選手がグランドで活躍していた。

それから10年近く経った頃、私は飯能支店の
取引先係(外訪営業)の総括責任者をしていた。
その年の夏、支店エリアにある聖望学園が、
初めて夏の甲子園に出場することになったのだ。

早速、後援会が発足され、飯能支店に後援会の口座が作られ、
私が寄付金集めの事務方と口座の管理をすることになった。

ある日、寄付金の報告と通帳の返却をするために、
学校の事務室に行った時、
一通り話が終わった後、事務長が、
「せっかくだから、生徒の練習を見て行きますか?」
と言われ、グランドに連れて行かれた。

選手が打撃練習と守備を行っている。

「やっぱりいいですねえ。高校野球は。」
と言いながら、私は1人の選手に目が釘付けになった。

「彼は何という名前なんですか?」
「ああ、やっぱりわかりますか。」
と事務長は笑いながら、

「彼は鳥谷と言います。」

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私は野球は好きだが、
さすがにまだ甲子園に出ていない、
地元の選手の名前までは知らなかった。

夏の甲子園に出場するほどのチームである。みんな上手なのは当たり前だ。
しかし、素人の私から見ても、彼のショートの動きは、他のどの選手のそれよりも、次元の違うものだった。

打球を追いかける最初の一歩から捕球、
送球までのフィールディングが、流れるようであり、まるでプロの選手を見ている様である。

身体全身から野球センスが溢れ出ていた。

「みんなかわいい生徒なので、
こういう言い方は憚られるのかもしれませんが、
やはり、彼は別格です。出来ればプロに行って欲しいと思います。
先日はベイスターズのスカウトが挨拶に来ました。」
と事務長が言った。

私は頷きながら、才能というのは有無を言わさず、
他人を認めさせることなんだなと思ったのだった。

結局、聖望学園は甲子園の初戦で敗退した。
それでも、彼は確か2安打以上だったと思う。
しかし、ショートを守っていた彼が、
リリーフでマウンドに上がったのには、
さすがに驚いた。
143キロの速球だったのを覚えている。
いずれにせよ、才能に満ち溢れていた。

彼はその後、六大学で三冠王を獲り、
阪神タイガースに入団し、侍ジャパンでも
活躍しているのは、ご存知の通りである。

それはそれは、エリートアスリートの中での厳しい競争である。
才能だけでここまで来れるものではないことはわかっているし、
もちろん、相当な努力をしているのも間違いないだろう。

それでも、だ。
「世の中、実はどんなに努力しても、最後は才能にはかなわないものかもしれない。」
と思ったのは、これが初めてである。

それは決して努力を否定しているわけではない。
所詮、私みたいな凡人は、努力に努力を重ねるしかなく、
そしてようやく才能のある人間と同じ土俵に立てると
いうことなのだ。

鳥谷選手を見るたびにそのことを思う。

そして、なぜ彼はスワローズに入団してくれなかったのか、
とも思うのである(笑)

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