さて、6月で今年も半分が過ぎました。今回は2015年上半期のIPOマーケットの総括をしてみたいと思います。

 

【上半期新規上場社数は43社、市場はマザーズが圧倒的。 7年ぶりに札幌アンビシャス銘柄も】

 

 日経平均

過去10年のIPO社数とその年の大納会の日経平均終値をグラフにしました。2015年は6月30日終値現在です。

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先ずは2007年の世界的なサブプライム問題表面化より、日経平均とIPO社数は下げに転じ、2008年のリーマンショックを機に日経平均が大きく下がると共に、 2009年にはIPO社数は19社まで落ち込みました。それ以降、日経平均は東日本大震災の影響を受けるも、IPO社数は6年連続増加しており、昨年は77社が上場しました。 今年は上半期で既に43社が上場しており、昨年を抜く勢いですが、秋には日本郵政の大型上場も控えており、マーケットの需給バランスが大きく変わる可能性もあるため、時価総額1000億円以上で上場する予定の発行体は、その上場時期について、日本郵政上場後の、来年の上場に時期をずらす可能性もあり、上場社数が昨年を超えるか否かは、まだ微妙な状況でしょうか。
 

 

このグラフを見るとIPOはやはりマーケット環境に大きく影響を受けると言ってよいでしょう。但し日経平均は今年は過去10年で一番高いのですが、IPO社数は150社を超える水準にはほど遠い状況です。

 

 

 上場社数

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上半期の市場別のIPO社数は、マザーズが31社と全体の4分3以上となっており、昨年来、時にマザーズ上場の傾向が強くなっています。一方で今年は7年ぶりに札幌アンビシャスにIPOがありました。 エコノスという発行体で、これは2008年のインサイト以来の7年ぶりのIPOとなります。

 

【主幹事は野村が貫録のトップ、SMBC日興が既に昨年通期実績を超える】

 

 主幹事証券
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次に主幹事証券ですが、引き続き野村13社でトップですが、昨年通期で8社だったSMBC日興が既に今年上半期で11社と、ようやく三井住友グループの顧客連携が顕在化して来た様です。また昨年通期で5社だったSBIも既に4社となっており、主幹事が出来るネット証券として着実にその存在感を高めています。

 

【申請期売上高50億円未満が全体の半数以上 経常利益5億円未満が全体の4分の3】

 

 売上高  経常利益

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申請期の売上高見込みですが、売上高50億円未満が24社と全体の半数以上という状況は昨年通期と変わっていません。一番売上高が小さいのはバイオベンチャーのヘリオスの 7300万円、一番大きいのはコンタクトレンズのメニコンで、658億円でした。

 

一方で経常利益ですが、赤字が3社あり、経常利益5億円未満まで29社で全体の3分の2以上となっています。赤字が一番大きかったのは ヘリオスで15億8800万円の赤字、経常利益が一番大きかったのは、やはりメニコンの31億円でした。これを見るとIPOでは昨年同様、申請期売上高 50億円程度、経常利益5億円未満という発行体のイメージが出来そうですね。

 

【gumiショック以降、予想PERは保守的 赤字とgunosyを除いた平均は21.0倍、中央値は17.2倍】

 

 予想PER

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次に公開価格(※初値ではない)による予想PERですが、これはまさに千差万別ですが、赤字2社を除くと一番予想PERが高かったのは、 gunosyの5241倍。次がジグソーの74.5倍なので、gunosyだけが、ちょっと異次元の世界でした。赤字会社とgunosyを除く40社の予想PERの平均は21.0倍、中央値は17.2倍であり、これは昨年の同22.4倍、同19.0倍より、むしろ低くなっています。

 

ご存知の様に、昨年12月に予想PER105倍で上場したgumiが、今年3月5日に大きく業績下方修正を行ったり、今年1月に約30億円の銀行融資を受けていたこと、また3月27日には、従業員の希望退職が発表するなど、大きく混乱を極め、IPOマーケットに対する不信感が募りつつありました。

 

その結果として、3月31日には当時の日本証券取引所斎藤CEOが、主幹事証券、監査法人に対して、上場審査の厳格化を要請し、民主党大久保勉参議院議員が金融庁に対し、上場直後、業績下方修正等を行ったgumi、ジャパンディスプレイ(共に東証1部)、OATアグリオ(東証2部)、ANAP(ジャスダック)、フルッタフルッタ(東証マザーズ)関して主幹事証券会社の審査体制などの実態調査を要請する意向だと報じられています。

 

そして、その後の各主幹事証券引受審査と証券取引所審査では、かなり厳格な業績見込みの確認を行った結果、マーケットそのものの環境改善もあり、その後のIPOでは、中村超硬の予想PER68倍以外は、割と落ち着いたバリュエーションになっています。

 

株価が懸念されたgunosyも上場時には公開価格と同額の1520円で寄り付き、その後、業績上方修正を行うなど、しばらくは高値水準でしたが、個々に来て公開価格を下回って来ているようです。

 

いずれにしろ、バリュエーションはIPOディスカウント後で 20倍が一つの目安にはなると思います。

 

 

 

【株式時価総額は872億円から4億円まで。札幌アンビシャスは上場時時価総額の基準なし】

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公開価格で計算した株式時価総額の分布ですが、50億円未満で24社、100億円未満で32社と全体の 75%になります。まだ上半期なので、わかりませんが、昨年は100億円未満が60%程度だったので、若干今の段階では今年は小粒かもしれません。一番小さいのはヘリオスの4億 4500万円。マザーズの上場基準の時価総額が10億円ですが、札幌アンビシャスの上場基準はありません。

 

一方で 昨年は大型上場が多く、1000億円以上の上場もリクルートホールディングス1兆7994億円、西武ホールディングス5474億円、ジャパンディスプレイ5412億円、すかいらーく3378億円、日立マクセル 1104億円と通期で5社ありましたが、今年はバイオベンチャーのサンバイオの872億円が一番大きいです。但し日本郵政が秋に上場予定であり、冒頭で書いた様に、日本郵政が上場するとその前後1か月程度は株式の需給バランスが悪くなるので、1000億円以上の上場は今年は少ないかもしれませんね。

 

【初値騰落率は39勝3敗1分け。最大はテラスカイの1700円が7650円。騰落率350%】

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43社の公開価格に対する初値の騰落率は初値が公開価格を上回ったケースが39社、初値割れが3社。公開価格と同じが1社でした。環境は悪くなかったのでこのような水準かと思います。全社平均は80.9%でした。0~30%までに一つの山があり、次は40%~60%、そして100%以上です。

 

主幹事の立場からすれば、初値が高いことが必ずしも、良いことだとは考えていません。

 

公開価格のプライシングですが、通常のバリュエーション(フェアバリュー)からIPOディスカウントは20%~30%が多いと思われます。要は想定時価の20%~30%安で売ってるわけですね。

 

この様にする理由は大きく2つあります。

 

ひとつは投資家からの目線です。今この値段が正しいのはわかる。投資家は正規の値札では買いづらい。それは言い換えれば「いつ買っても同じ値段」ということであり、今買わなくてもよいと言うことです。

その場合、投資家から見たIPOの魅力が薄れ、発行体が考えている株数を消化できない可能性があります。

 

換言すれば「100円のものを100円で売ってるのでは、芸がない」ということです。

投資家は短期的・長期的に株価上昇が見込めればいいわけで、別にこの銘柄でないとダメな理由はあまりありません。

 

もうひとつは、「情報の連続性」の部分です。既に上場している会社は過去暦年で財務諸表を定期的(四半期毎)に開示しており、その数値の連続性については担保されているわけですが、ハイライト情報含め5期の財務諸表が開示されていたとしても、まだまだ情報の開示体制が不慣れであることは否めず、その部分のディスカウントがかかります。

 

要はこのフェアバリューとIPOディスカウントのギャップが、公募価格と初値との関係に近いと考えていただければと思います。よって、IPOすることによって、このディスカウントが解消され、通常、初値は公開価格の20%~30%になるのが一番良いディールだと言われています。

 

よって、その時のマーケット環境にも影響は受けますが、初値が公開価格の2倍にも3倍にもなるのは、当初のバリュエーションが妥当であったかということになり、主幹事証券としてはあまり褒められたケースではないということになります。

 

【ファイナンス総額はサンバイオの150億円が最大。オファリングレシオは時価総額の4分の1が目安。】

 

 総額ファイナンス

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公募・売出を含むファイナンス総額(OAは含まず)ですが、10億円未満が21社で全体の約半数。20億円未満で 33社とこれもやはり全体の75%になります。一番小さいのはエコノスの1億1000万円(公募5500万円、売出 5500万円)で、マザーズでは テラスカイの3億9100万円(公募3億1200万円、売出7900万円)になります。一方で一番大きいのは、サンバイオの 150億円でした。

 

 オファリング

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次にファイナンス総額と同じくらい重要で、時価総額の何%をマーケットに放出するかという指標のオファリングレシオ「(公募数+売出数)÷発行済株式総数(公募含む)」ですが、これは、平均が25.6%、中央値が 24.6%でした。要はIPO時に約4分の1のファイナンスを行っているということになります。これはマーケット環境に関係なく、従来からこの程度の比率になっています。今回一番小さいのは、9.0%のジグソーでした。一番大きかったのは、 中村超硬の57.7%です、しかもそのうちの4分の3であり、産業革新機構とジャフコのイグジットが中心となりました、通常ファンドのイグジット案件になるとオファリングレシオが大きくなり、マーケットで消化出来ず、公募割れになる場合が多いのですが、本件は初値騰落率11.8%と、無難な立ち上がりとなりました。

 

【まとめ gumiショック以降、バリュエーションは低めとなり、初値騰落率が上昇】

 

今年の上半期のIPOは総じて小粒だったと言えるでしょう。下半期に日本郵政や、LINE、ベルシステム24、コメダ珈琲などのネームが挙がっていますので、規模的には昨年に近い水準になるかもしれません。

また、春先に言われたgumiの業績下方修正による、いわゆる「gumiショック」によるIPOマーケットの 不信感の拡大が危惧されましたが、その後の主幹事証券、証券取引所の迅速な審査対応により、大事には至らなかった様です。むしろ、直近のIPOに限って言えば、gunosy以外は、低めのバリュエーションの結果、初値騰落率が上昇して来ている状況です。

そういった意味では、まだまだIPOマーケットの投資家ニーズは旺盛であり、引き続き堅調であると思われます。

いずれにしろ、今年後半も材料に事欠かないIPOマーケットに期待したいと思います。

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