■ハイライト

・株式時価総額は332億円、予想PERは異次元の5241倍、株式流動性は適正

・起業家が今度は投資家に回る、米国型ベンチャーエコシステムの成功例

・業績見込みの精査は更にしっかりと行う必要あり

 

 

■株式時価総額は332億円、予想PERは5241倍。株式流動性は適正。

ニュースキュレーションアプリ運営のgunosy(グノシー)が3月24日にマザーズに上場承認されました。上場日は4月28日です。

会社設立は2012年11月で上場までに約2年半しか経っておらず、極めて短期間での新規上場(IPO)となります。今回、株式時価総額が332億円なので、株式時価総額ベースであれば、直接東証一部への上場も可能なのですが、東証上場の形式基準が3事業年度以上事業を行っていることが必要なので、マザーズへの上場となります。

 

今期の業績予想は、売上約30億円、経常利益500万円。想定発行価格が1520円、予想PERは5241倍です。今年既に上場した企業の予想PERの平均が18.3倍なので、ちょっと次元の違う話ですね。

但し昨年も同様なケースがあり、2014年6月に上場したフリークアウトというインターネット広告解析の会社が、予想PERが6451倍というのがありました。いずれにしろ、同業他社比較というよりは、将来の突き抜けた成長をどれだけ見積もるかということになります。この企業価値評価(バリュエーション)の算定は主幹事が行うものであり、その評価根拠の詳細が表に出ることはありません。

 

また、バリュエーションと同じくらい、重要な指標ファイナンスの規模を測る指標として、オファリングレシオ(Offering Ratio)があります。計算は簡単で(公募株+売り出し株)/ 本件公募含む発行済株式総数)。要は発行済み株式数のどの程度を株式市場に放出(公募・売り出し)すれば、適正に投資家が株を消化できるかという指標のことです。

このオファリングレシオはIPOを成功させるために極めて重要なファクターとなっており、このレンジはIPOの場合、25%程度が適正だといわれています。

 

今回gunosyは、公募増資が350万株で約53億円、売り出しが241万株(オーバーアロットメント含まず)で約37億円の合計90億円のファイナンスとなり、本件のオファリングレシオは27%となりますが、今年のIPOの平均が26.9%、昨年の平均が26.1%であることを勘案すると、平均的な水準と考えて良いでしょう。

 

■個人投資家(エンジェル)の大きな関与が効いている稀有なケース

ベンチャー企業がその事業を成長させていくにあたり、外部の資本が必要な場合があるわけですが、一般的にはベンチャーキャピタル(VC)がその役割を担っているのは、ご存知の通りです。但し、このgunosyの資本政策を見てみると極めてエンジェルの役割が効いているのが分かります。

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gunosyは当初資本金15万円で設立されました(有価証券届出書55ページ)。そして設立から3か月後の2013年2月に木村新司氏を中心とした個人投資家(エンジェル)から、約3000万円の出資を受けています。また、同時に創業マネジメントの福島氏、吉田氏、関氏から375株を3000万円で買い取り(同123ページ)、同年5月にはやはりエンジェルと思われる青木直子氏と共に更に5000万円を出資しました(同55ページ)。この時点で木村氏は既に1億円超をgunosy出資していたと思われます。

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これは第三者割当増資の金額と、その時のプレマネーベースの株式時価総額推移です。

gunosyは最初の決算期である2013年5月までに約9000万円の出資を受けていますが、通常、このシードマネーをベンチャーキャピタル(VC)が出資することはなかなか難しく、会社の成長戦略に支障をきたす場合が少なくありません。但し、今回の場合は、2013年7月にジャフコ等のVCが3億5000万円の出資を行うまでの間、木村氏を中心としたエンジェルが見事にそのブリッジの役割を果たしています。しかもVC等が出資する段階でのプレマネー株式時価総額は既に24億5600万円までに成長していました。

 

※プレマネー株式時価総額

未上場企業が資金調達をする以前の株式価値のこと。この場合は発行価格×今回の資金調達直前の発行済株式数。ポストマネー株式時価総額とは、資金調達後の株式価値であり、発行価格×今回の資金調達後の発行済株式数。

 

更に驚くべきことは、この木村氏、なんと2014年5月期には3億円をgunosyに融資しています(同101ページ)。新たにVCから資金調達するまでのつなぎ資金だったと思われます(当期中に既に返済済み)。

要は木村氏はピークでは、約4億円を出資若しくは融資しており、エンジェルとはいえ、一個人で行う金額としては、かなりの金額であると思われます。

 

webで調べた限りでは、木村氏は東京大学物理学部物理学科卒業後、ドリームインキュベータに勤務後、2007年にアトランティスというweb広告関連の会社を創業し、2011年にグリーに約22億円で会社を売却しました。その後gunosy含め数社への投資を行っており、おそらくその投資資金はこの会社売却時の資金の一部であると思われます。

木村氏は2013年にgunosyの共同代表CEOに就任し、その後のベンチャーキャピタル等からの資金調達を中心に仕事を行って来ましたが、昨年2014年8月には退任しています。

 

今までもこの様な個人投資家は存在していたわけですが、ほとんどがファンド等に出資する場合が多かったと思われ、一個人でここまで会社に直接的に投資して成功を収めた人は、あまり記憶にありません。そういった意味では、自ら起業して、その会社を売却し、今度は投資家として、創業間もないベンチャー企業にシードマネーを入れていくというのは、米国に見られる形態であり、日本でも新たなベンチャーのエコシステムが形成されていく予感がします。

 

■業績見込みの精査は更に精度を高く

昨年12月にIPOした、モバイルオンラインゲームの開発、運営及び配信を行っているgumi(グミ)が、3月5日に大きく業績下方修正を行ったり、今年1月に訳30億円の銀行融資を受けていたこと、また3月27日には、従業員の希望退職が発表するなど、大きく混乱を極め、IPOマーケットに対する不信感が募りつつあります。

 

今回のことは全て適時開示(タイムリーディスクロージャー)と言われ、上場会社は投資家に対して平等、正確、適時に行うことが求められており、上場審査の過程でその社内体制が構築されているかのチェックが行われます。仮に虚偽記載の場合は刑事罰や損害賠償の対象となります。

 

そういった意味では、適時開示の社内体制を審査する主幹事証券である野村は、gumi に対する業績予想の精緻さについて、第一四半期の業績だけで上場させるのではなく、もっとギリギリまで、その業績進捗を確認する必要があったと考えています。

 

特にgumiは直接東証一部に上場したケースであり、直接東証一部に上場出来る形式基準は、「最近2年間の連結経常利益の合計が5億円以上」、または「上場時の株式時価総額が250億円以上」なのですが、業績下方修正を行った上場申請期も赤字だったとなると、当初の時価総額946億円どころか、形式基準の250億円がバリュエーションとして算定されたか疑問のところもあり、もし250億円がつかなければ、3期連続赤字であるため、もう一つの基準である、「最近2年間の連結経常利益の合計が5億円以上」にも該当しないことになり、そもそも東証本則市場(一部、二部市場)上場への形式要件が整っていなかったことになります。

 

会社の業績見込みが甘いのは大前提として、曲がりなりにも東証一部であり、外国人、機関投資家に対してトウキョウマーケットの上場審査の未熟さを露呈したことを鑑みると、野村だけでなく東証審査にも甘さがあったのは否めないと思われます。

 

話をgunosyに戻しますが、今期業績見込みは、既に第三四半期まで開示されており、第二四半期累計で、約3億円の経常赤字であったのが、第三四半期単独では約2億円の黒字転換、そして第四四半期単独では約1億円の経常黒字を見込んでいます。gumiは第一四半期実績のみで上場したわけですが、今回はそれを第三四半期実績まで確認しているのは評価出来るところです。但し第四四半期の経常利益が500万円下振れしてしまうだけで、通期で赤字になってしまうため、十分その進捗管理には注意が必要ですね。

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■まとめ

従来より、上場審査は審査基準を緩和すると不祥事まがいのことが起き、審査基準が厳格化された結果、新規上場件数が減少してしまい、証券市場が活性化しなくなるため、再び審査基準を緩和、そしてまた不祥事が起き再度審査を厳格化するという流れを繰り返しています。ここにきて、メガベンチャーの上場が相次ぎますが、それ自体はとても喜ばしいことだと思いますが、大きな時価総額で登場する企業だからこそ、しっかりとした社内体制構築が必要で、投資家に対して大きな責任を負うというのも然りでしょう。

 

また、ここに来て、小さなVC並みの投資資金を保有したエンジェルが日本にも誕生しつつあることも、シードステージの資本政策を多様化させる上で、非常に有効でしょうし、嬉しいことです。今年もしっかりと審査された、新規上場の会社がその後も業績も伸ばし、これからの日本を代表する企業になっていくことを願ってやみません。

 

 

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