さて、そろそろ、総合電機も第三四半期のプレスリリースが出てきておりますが、

今回は総合電機の事業ポートフォリオ評価を検討してみましょう。

 
 

本業界の特徴は、電子・電機・情報技術を活用した多角化した事業ポートフォリオを有する点です。この事業ポートフォリオは民生向け・産業向け、また最終製品だけでなく、時には部品・材料までも含む幅広いものですが、デジタル化の進展と共に従来と比較すれば簡単に達成できるようになって来ています。またEMS業界の台頭によって、部品製造だけでなく製品組立も自社で行う必要がなくなり、分業化が促進されました。
 

 

事業ポートフォリオ管理の重要性は従前から指摘されており、一時は日本企業が過半の世界シェアを握っていた半導体に関しても大部分は本体から切り離されました。日立製作所、東芝、三菱電機は、リーマンショック以降はますますBtoB事業への注力が進めています。しかし国を超えた競争が激化する中で、従来以上のスピードで各事業の強化・撤退を行うことが求められており、強化する事業に関しては、技術・製品・ブランドなどに関して、国内のみならず世界でもトップクラスの競争力を持つことが求められているため、戦略的なポートフォリオ管理と執行力の重要度が増している状況です。
 

 

では、その事業ポートフォリオをどのように評価するかですが、Economic Profit 法 (EP法)というのがあります。EP とは事業活動から得られた利益から,投下資産にかかる資本コスト相当額を差し引いた経済価値ですね.つまり投資した資本に対して,一定期間(短期間)でどれだけのリターンを生み出したかを事後的に計測し、企業が将来の創出する EP を現在価値に割り引いたものの総和を求める方法です
 

 

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EP
法は資本コストと会計データが揃えば、誰でも計算できますが、資本コストの設定が重要となります。例えば、事業部門間での事業リスクに大きな相違がない場合には、全社で同一の資本コストを全事業部門に共通適用出来ますが、一方で、事業部門間で抱える事業リスクが大きく異なる場合には、各部門のリスクを適切に反映させた資本コストを計算する必要あります。更に投資プロジェクトのリスク、投資対象国、投資主体(上場企業、非上場企業、本社、子会社、海外等)によってハードルレートは多様に変化します。
 

 

とはいいつつも、先ずは昨年3月末付で株式時価総額1兆円以上の総合電機5社(日立、東芝、三菱電機、パナソニック、ソニー)の事業ポートフォリオを見てみましょう。

 

先ずは全社のROICとWACCの関係です。

 


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これは2012年以前の過去5年のROICとWACCの関係グラフです。
このグラフの円の大きさは投下資本「(流動資産+固定資産)-(流動負債-短期借入金)-負ののれん」の大きさです。

 

当然ながらROICがWACCを超えていないと企業価値を毀損していることになります。このグラフでは、日立と三菱電機のみがライン上にあるだけで、他は企業価値を毀損しています。この中で興味深いのは、日立は大きな投下資本でリスク・リターンの小さいところで戦っているのに比べ、三菱電機は小さい投下資本でリスク・リターンの大きいところで戦っていることでした。

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それが、前期は、ソニー以外の総合電機はほぼライン上に集まって来きました。特にパナソニックは大きく投下資本を縮小させたことで、かなり効率的になって来ています。一方三菱電機は価値を毀損させてしまいました。

 

それでは先ほどのEP法で個別に見ていきましょう。

日立


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非常にセグメントの多い発行体です。3カ年推移をセグメントごとに矢印で方向を示しました。縦軸がEP (NOPAT-投下資本×WACC)で横軸が投下資本の大きさです。EPがマイナスということは、セグメントの事業価値がマイナスということであり、そのセグメントがどれだけの資産を持っているかということですね。
 

 

日立の稼ぎ頭は情報通信システム、いわゆるIT部門でした。一方で従来稼いでいた半導体や電線、ケーブル等の高機能材料は急速に価値を落としています。金融サービスはいわゆるリースやローンなので、投下資本が大きい割には金利しか稼げないため、事業会社のWACCでは採算が取れないことになります。これは日立と言うより事業構造の問題なので、実は日立以外の総合電機はほとんどこの金融会社を他のリース会社やクレジット会社に売却してしまいました。日立だから未だ持ちこたえていられるのでしょうね。

 

東芝


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社会インフラが利益率が高く、安定的にEPを稼げるコア事業ですが、投下資本が大きいだけにコストが上がるとロスの金額が大きくなる可能性あります。

電子デバイスは市況産業ですが、近年安定的に利益、EPを捻出しています。コントロールがうまく出来ればEPをプラスにし続けることは可能でしょう。今期もNANDの収益が上昇しているので楽しみです。一方で、デジタルプロダクツ(PC、映像、複合機)の民生用機器はやはり極端に利幅が小さいため、投下資本を回収出来ていない状況。今後の抜本的な対策が必要と思われます。

 

三菱電機


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全体的に足許悪化しました。産業メカトロニクス(インバーター、サーボ、電動機等)は大きな資本を利益につなげることが出来る事業ですが、今後海外の景気動向に左右されるため、コストコントロールが重要になってくると思われます。家庭電器(テレビ、エアコン、冷蔵庫等)についてはさらに効率的な事業を行なって行く必要であり、EPをプラスにすることが最優先課題です。情報通信システムについても同様ですね。

 

パナソニック


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先ずは投下資本を半減させ、EPベースでは改善に向かいつつある状況です。三洋電機のうち、白物家電をハイアール等に売却することで大きく投下資本を回収しました。また売却時に残したリチウムイオン電池(エナジー)は現状EPベースで赤字です。あとはメインのデジタルAVCネットワーク(PC、デジカメ、テレビ等)のEPの確保が課題ですね。利益率のアプライアンス(エアコン、冷蔵庫、白物家電)にそれなりの投下資本を張り、事業拡大していくことが重要かと思われます。実は私はこのパナソニックの復活に期待しております。

 

ソニー


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さて、ソニーですが、ここはこの3年毎年セグメントを変更しており、比較が出来ません。それでも前期だけでもいろいろなことがわかります。先日ソニーの格下げが発表されましたが、なかなか事業ポートフォリオの再編が進まない発行体です。

実はソニーでコンスタントに稼いでいるのは金融(ソニー生命)です。これはリース等の金利ではなく、生命保険がコスト割れなく、収益事業として成り立っているということですね。

 

一方でホームエンターテイメント(テレビ、オーディオ等)、モバイルプロダクツ(PC、携帯端末等)の投下資本の規模、EPの損失があまりにも大きく、仮にどんなに音楽や、ゲーム、映画で稼いだとしても、企業価値には大きくは反映させず、焼け石に水の状態ということになります。ソニーはやはり、この大赤字の2つのセグメントの投下資本を回収する方向しか、業績改善は難しいと思っています。
 

と書いていたら、以下の情報が入ってきました。

 ソニー:パソコン事業さまざまな選択肢、中国レノボと提携報道は否定

いずれにしろ、総合電機はいち早く重電に事業をシフトした日立、東芝、三菱電機の業績回復が早く、民生用機器、いわゆるBtoC事業を中心したパナソニック、ソニーのうち、パナソニックはリストラを進めた結果、かなり状況は改善してきているが、ソニーだけは未だ見えずというところでしょうか?


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