4月ですね。
この春から周りに国内大学院MBAに通われる方も多いということで、
自分の経験からお勧めの2013年度版ファイナンス系参考図書を記載してみました。今回は3冊入れ替えました。ご参考になれば幸いです。

初心者向け

「入門ビジネスファイナンス」 西山茂

私にとってこの本の位置付けは変わりません。先ずはここからということで、とてもわかりやすいです。2008年の発刊なので、ちょっと時間が経ってますが、これは初めてファイナンスを学ばれる方にお勧めです。NPVに関する詳細な説明、たとえばゼロ年目には割引率を掛けない等のアドバイスがされており、薄目の本なので、2日間くらいで一気に読めるかもしれません。

「バリュエーション」 森生明著
これもそもそも企業価値って何なのか的なところから説明しており、バリュエーションの本としては非常にスタンダードな本です。森生氏は「ハゲタカ」の監修で有名ですし、国内社会人大学院の講師としてもご活躍です。

中級者向け

昨年第5版が発売されました。現在私が実務を行う上で考え方のベースになっている書籍です。ブリーリー・マイヤーズの「コーポレートファイナンス 上/下」に比べ実践的であり、バリュエーション方法については下巻で赤字会社の場合、金融機関の場合等個別業種で記載されています。DCF法についてのハイネケンのケースはかなり詳細に書かれており、翻訳も秀逸です。

「ビジネスバリュエーション / 評価の基本から最新技法まで」安達和人著
一昨年の4月に発刊された本ですが、資本コスト、特にリスクプレミアムについて、未上場ディスカウントといった漠としたものでなく、サイズプレミアム、非流動性プレミアムに対する考え方をイボットソンデータに基づき、バリュエーションの計算過程でしっかりと落とし込んでいる部分が非常に参考になります。特にDCF法のバリュエーション方法は秀逸であり、ぜひお勧めです。

上級者向け

「企業価値評価のQ&A」プルータス・コンサルティング著
昨年の3月に出版されました。前述のビジネスバリュエーションを更に深掘りする上で、サイズプレミアム、コントロールプレミアム、永久成長率などについて、かなり詳細な説明がなされています。プルータスは上場企業の大型M&AやTOBの株価算定やフェアネスオピニオンを行っているコンサル会社なので一見の価値ありです。

「バリュエーションの理論と応用」谷山邦彦著
これは2010年春に出た書籍ですが、内容が難しいわりには今でも平積みされており、そこそこ数も出ているようです。通常のDCFというよりも特殊なケースに価値があります。ライツ・プランを伴うバリュエーション、エクイティ・キッカー(新株予約権)の評価、転換社債型新株予約権付社債(ハイブリッド証券)、強制転換優先株式の評価等ですか。まあ、ここまで読むのはかなりマニアックですが。

テーマ別推薦書

「日本企業のコーポレートファイナンス」砂川伸幸、川北英隆、杉浦秀徳著 
もう発刊されてから4年くらい経ちますが、これは日本企業のファイナンスに特化し、資本コストやβの情報が集約されており、ケースで日本企業をバリュエーションするうえで、ツールとして非常に参考になると思います。投資銀行の連中はだいたい持ってます。お勧めです。

「企業組織とコーポレートファイナンス」 滝沢好夫著
昨年の5月に出版されましたが、前述の「日本企業のコーポレートファイナンスに比べ、M&Aをケーススタディとして実際の数値を分析、説明しながら解説してあります。阪急阪神ホールディングス、特にフジテレビ・ライブドア事件についてはかなり詳細に書いてあるため、敵対的買収買収のプロセスを伺い知る上では、非常に参考になります。

「起業のファイナンス / ベンチャーで一番大切なこと」 磯崎哲也著
2010年10月に発刊され、起業系ではすでにスタンダードになっていますが、従来からの新規上場するための資本政策に留まらず、創業経営者がVCから資金を調達するために、どこに注意しなければならないか、また現状日本の新規上場では種類株は上場前に普通株に転換されてしまため、なかなか種類株の資本政策がわかりにくい中、種類株をどの様に運用していけばいいかなど、非常に参考になります。 

「M&Aコンサルティングの実務」 佐武伸著
これはM&Aのフィナンシャルアドバイザーや、事業会社でM&Aを行っている方向けの実務書です。売上数億円から数十億円くらいまでの案件イメージでしょうか。実務としての順序や注意事項に丁寧に書かれており、特筆すべきは意向表明書や株式・事業譲渡契約書のひな形が記載されていることでしょうか。非常に参考になると思います。

一昨年3月に発刊されましたが、コングロマリット化した大企業が事業部のポートフォリオ評価を行う上で、簡便で有効な書籍だと思います。エコノミックプロフィット法を使い、NOPATからWACC×投下資本を引くことで、その事業の価値が拡大しているのか毀損しているのか測ることが可能です。但し実際には社内のデータを持っている財務・企画の人間で無い限り、有価証券報告書上のセグメント規模より小さい単位を評価するのは難しいかもしれません。

ファイナンスは非常に面白い学問です。

カネに色はついていません。

私がファイナンスに魅せられている理由は、極めてロジカルでダイナミックだからです。
よく議論をしていると、答えは2つあるとか3つあるとか、実は答えはないとかいう話があったりしますが、少なくともファイナンスや数字については、答えはある一定の領域しかないと思っています

「エコノミクスはすべてに優先され、マーケットは常に正しい。」

本来はこのぐらいの価値があるはずと言われていたとしても、今あるマーケットの姿が、紛れもない真実であり、唯一の答えなのだと思います。起こることはすべて正しいと。

戦略は正しい。きちんと人材の分野も押さえていて、高い志もある。とは言っても、そういったものを全部つなぎ止めるベースとなるべきものは、やはりロジカルな数字です。
数字があるからこそ、こういった話ができると思うのです。
数字を抜きにして、「企業は人です」だけで話を全部済ませてしまうのは、どうも自分としては違和感が残る。


もちろん、数字が全てというつもりはありません。
戦略は当然ファイナンスとつながりますが、志や人の動かし方といった話ができるのは、その前にきっちり数字に強くなってからではないのかと思います。
この日本からファイナンスに強いMBAがたくさん生まれて欲しい。
そのために自分ができることをやりたいと考えています。


今後ともよろしくお願いします。