先日、政府が新興企業に限り上場要件の緩和を検討していることが分かりました。市場活性化によってベンチャー企業の資金調達の道を広げるとともに、企業が資金を投資に回すことで雇用拡大などの効果も期待され、日本経済再生本部が今年半ばにも策定する成長戦略に、具体策を盛り込みたい意向だそうです。

政府案は、米国で2012年4月に施行された新興企業の資金調達を促す法律(JOBS法)を参考にしており、日本版JOBS法では、企業に求めている内部統制報告書の内容を簡略化するほか、原則として過去5年分の提出を求めている財務諸表を、2年分程度に減らすことなどが考えられるとか。

今までも新興企業の上場要件の緩和と引き締めは、景気の拡大目的とFOI等の不祥事の発生が起こるたびに、繰り返し行われて来ました。

但し今回の施策で間違えて欲しくないのは、緩和する部分でしょうか?
先ず、上場の形式要件を緩和するのと、発行体に投資家が付くか否かは
別の話だということです。

数年前に東証が機関投資家のみを対象とした、東京AIMという市場を創設しました。一定の利益などの数値基準を設けず、審査は証券会社に委ねるのが特徴でしたが、結果的には数社が上場したのみで盛り上がらなかったのは記憶に新しいところです。

理由はいくつかあると思いますが、先ずは発行体の規模感でしょうか?時価総額数億円、ファイナンス額数千万円では、プロの投資家は投資出来ません。あとは審査責任が取引所ではなく、全て主幹事証券会社にあるために、証券会社の腰が引けてしまった部分もあるかもしれません。

また、マザーズやジャスダック等の市場に形式基準の利益(マザーズは利益要件ない、ジャスダックスタンダードは直前期の連結経常利益が1億円以上)で上場しても、やはり投資家が付かないことを想定して、主幹事証券会社会社自体が上場を認めない可能性があります。

経験で言えば、通常は直前期の連結経常利益が3億円程度は欲しいところでしょうか?(バイオは除く)

但し、やはり緩和して欲しい部分はあります。

上場審査には大きく2つあり、一つは事業の継続成長性審査であり、申請期の業績見込みの確からしさと、将来に渡る事業モデルのの成長性、換言すれば発行体の経営戦略の精査そのものです。

そしてもう一つは発行体の透明性審査です。内部管理統制構築およびコーポレート・ガバナンスの遵守の確認。平たく言えば、不正会計や一部役員の暴走が起きないようなチェック体制が機能していますか?ということの審査ですね。

緩和して欲しいのは後者の方で、私が証券会社の上場申請担当者だったとき、東証審査、証券引受審査から出てくる意見はほとんど一般株主権利の保護に軸脚が置かれており、内部統制、予算実績管理などかなり厳格に行われていました。マザーズは本来ならベンチャーのエントリー市場であったはずなのに、実質は本則市場(東証一部、二部のこと)とほとんど変わらない体制整備を求められていました。ここは発行体のステージによって緩和、要は過不足のない対応を望みたいと思います。

間口は広くして上場してもらう。粉飾やガバナンス、業績下方修正等、引き続き一般株主に配慮しながら審査すことは当然ですが、所詮、株ですから業績変調などによりリターンの保証は出来ないわけです。怖いのであれば買わなければ良いわけで。重要なのはここのバランスでしょうか?

個人的には多少なりとも健全に儲かっているビジネスであれば上場させ、その資金で成長してもらい、駄目だったら退場してもらうのはいいことだと思います。ただ重要なのは退場組に対する退出のための株式流動性のバッファー(いわゆる株式買取ルール等)を決めることが必要だとは思いますが。

但し、上場時に開示される過年度財務諸表が5年から2年、いわゆる監査対象期間のみというのは、個人的には投資判断が付きにくいと思われますので、5年のままの方がよろしいかと思います。

いずれにしろ、新規上場数がマーケットの新陳代謝には極めて重要なので、ぜひ濃淡をつけた緩和策に期待したいと思います。

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