今日の日経で、政府は電機メーカーなどの競争力を強化するため、公的資金を活用する方針を固めたそうです。新法制定でリース会社と官民共同出資会社をつくり、5年で1兆円の工場や設備を買い入れ、企業の過去の投資に伴う負担を和らげるのが狙いとか。
技術革新が速い半導体や液晶パネルなどをつくる企業が手元資金を増やし、機動的に新たな設備投資をできるようにして次世代の成長基盤固めにつなげるそうです。

これ、産業競争力強化法と呼ぶらしいですが、私は基本的に反対です。

なぜ過剰投資資産の買い取りで行うのか?
紙面にも書いてありますが、プロダクトサイクルが速くなっており、
既存の大型設備投資の償却負担を緩和するため、とのことですが、
経営判断の結果として今があるわけで、その状態を企業は受け入れる必要があります。それを国が買い取ってくれるなら、経営者としては過去の失敗を帳消ししてくれるわけで、こんなありがたいことはない。
しかし、それでいいわけがありません。失敗を何でも国が尻拭いをするなら、間違いなくモラルハザードが起きます。

それでも百歩譲って、国が関与せざるを得ないのであれば、既に存在する産業革新機構や企業再生支援機構から出資を行うことで、経営責任を明確化することが本来の再生のあり方です。

紙面では政府の経営参画に難色を示す企業もあるとか。
それは自らの経営判断のミスを不問にし、雇用の確保を盾に、いいとこ取りをしようと言う、明らかに経営者の甘えです。
どうぞ、倒産してもらって構わない。

90年代から10年以上に及ぶ不良債権問題に決着を
つけたのは、小泉純一郎首相の時の銀行への公的資金導入でした。
やり方は単純です。増資という資本注入です。その結果、当日私が勤務していたりそなホールディングスは国有化され、経営陣も入れ替わり、故細谷会長のもと、ようやくここまで来ました。

そこで見たのは、会社は株主もの、経営責任はきっちり取るという当たり前の資本の論理です。決して不良債権の買い取りなどと言う小手先の話ではない。

経営とは、生き残ることです。
生き残るために、知恵を絞り、汗をかく。そして環境の変化についていけない企業は潰れて行く。言い換えれば適者生存です。
それを潰れて行く会社を延命させるのであれば、
不適者生存となり、本来あるべき需給の環境が大きく崩れ、
供給側のダンピングがおこり、結局全員が共倒れになってしまう。

経済原理は常に合理的であるべきで、
結果として潰れて行く企業が出ても、
それはある意味仕方のないことです。
重要なのは、潰れるべき企業を延命させることではなく、
その企業で雇用していた人材をなるべく速く新たな市場へ雇用させる、再配分させる社会保障制度を作ること、廻すことです。
5年で1兆円の資金は、そちらに回した方がよっぽど良い。

そうでないと、今ガツガツ営業しているアジア諸国に勝てるわけがない。

個人的には、今回の政権を奪回した自民党の全体な政策は賛成しますが、この産業競争力強化法は単にゾンビ企業を増やすだけなので、反対です。


今年一年間、小職の拙いブログをご覧になっていただき、
まことにありがとうございました。
また来年も身近に起こる、
コーポレートファイナンスの題材を中心に書いて行きたいと思います。

それでは、皆様、良いお年をお迎えください。

田中 博文

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