今日の日経で、台湾大手の中国信託商業銀行が中堅地方銀行の東京スター銀行の買収に向け株主と交渉を進めていることが分かりました。米投資ファンドのローンスターなどからほぼ全ての株式を約500億円で買い取るります。外銀が邦銀を買収するのは初めてだそうです。

東京スター銀行は投資銀行業界では個別案件のフルコースだったので、少し整理しておきます。
東京スターの全身は東京相和銀行であり、2001年に米国のローンスターの出資を受け、東京信用組合・東京中央信用組合・千葉県商工信用組合・中部銀行等を統合して、その規模を拡大してきました。

そして、東京スターは、2005年に公開価格1株43万円で東証1部に上場し、ローンスターは保有する東京スター銀行株の約3割を売却した結果、約900億円のキャピタルゲインを得ています。

その後、2008年にアドバンテッジ・パートナーズが1株36万円で公開買TOBすると正式発表します。買収総額は約2500億円となり、ファンドによる日本企業買収としては当時過去最大級でした。2500億円のうち、1700億円がシニアローンで、800億円がファンド資金なので、レバレッジは2.1倍です。
株価は公開価格を上回ることなく推移し、TOB価格も公開価格以下ということで、当時いろいろと物議を醸すことになり、当時話題になりました。

その後すぐにリーマンショックが起き、東京スターの業績が冴えず、買収時のシニアローンの金利支払が滞り、2011年1月、再度ローンスターや新生銀行、仏系クレディ・アグリコール などの融資団が受け皿となるファンドが「無償」で東京スター銀行 の全株式を取得します。⬅イマココ

この東京スター案件はいろいろとシンボリックなトピックが多かったですね。

一つはアドバンテッジのTOB価格36万円がIPO時の公開価格43万円よりも大きく下回っていたことです。
通常、新規上場はその発行体が今後も継続成長することを前提に行われるわけですが、TOB価格が公開価格より下であるということは上場時に株を取得した株主は誰も得をしないことになり、本当に上場出来る発光体だったのか、非常に疑問の残るところです。

もう一つは、今度はアドバンテッジが再度ローンスターを始めとする銀行団に譲渡する金額が無償であったことです。取得時にレバレッジ2倍で調達したシンジケートローンのコベナンツに抵触するための措置ですが、当時の東京スターの企業価値(EV)が、シンジケートローン以下であったため、要はエクイティ部分は備忘価格という解釈です。
結果として、アドバンテッジのファンド出資資金である800億円は全額パーになったと考えられます。

そして今回、中国信託商業銀行が全株式を500億円で買取るわけですが、
2005年に上場した時は3000億円だったのが、その6分の1での売却となります。いったいあの頃の値段とは何だったのか?

今回、中国信託商業銀行は日本の個人金融市場を目当てに参入するとのことですが、銀行は基本的には大きな差別化が効く事業ではなく、メガバンクの規模を持たない限り、地域特化型の集中戦略にならざるを得ません。しかも、各銀行の顧客基盤は厚く、新規顧客開拓、新商品導入の銀行が現在苦労しているのは、新生銀行、あおぞら銀行、新銀行東京、そして、イオン銀行に売却された日本振興銀行を見ればわかります。

例えば、振興銀行のミドルリスク・ミドルリターンのビジネスモデルは貸し渋りのころは、ラストリゾートとして、ニーズはあったのかもしれませんが、2006年ころ、景気が戻って来て、取引先が既存銀行の戻ってしまい、結果的に与信先が分散されず、大口先(30億円超先が全体の70%以上)に偏ってしまい、債権買取業務も含めて、そこがイカれたという理解をしています。

従来からの東京スターがこの10年で預金量を2倍、貸出額を2.7倍にしてもこの業績であることを勘案すれば、そう簡単な話ではないことは用意に想像できるところです。

そして、東京スター案件でずっとリターンをとっているのは、ローンスターでした。東京スターは一粒で二度美味しい。


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