日経によれば、製紙業界5位の北越紀州製紙は4位の大王製紙の株式約2割を同社の創業家から約100億円で取得し、筆頭株主となる方針を固めたそうです。これで王子製紙、日本製紙グループ本社に次ぐ第3位連合が誕生することになります。大王は前会長の巨額借り入れ事件を機に深まった創業家との対立に終止符を打ち、北越紀州との提携で生き残りを目指す構図でしょうか。



 北越紀州は現在保有している大王株約3%と合わせると、大王への出資比率は2割を超えるため役員を派遣し、持ち分法適用会社にすることも検討するとか。 



どちらからどの様なアプローチがあったのか、わかりませんが、印象としては現経営陣にとってはベストパートナーを選択したような気がします。 



製紙産業は製造原価に占める材料費の割合が高く、労働費や経費の割合が低い業界です。よって、労働コスト圧縮による効果は限定的であり、海外生産のメリットが少なくまた、紙の輸出入比率は4%前後と非常に低い水準で推移していることから、本業界は国内生産・国内消費を主とする内需型産業の特徴が強い業界と考えられます。 


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その中で、大王製紙は紙パルプ製品及び紙加工製品の2つの軸を持ち(2010年度営業利益構成比‐紙・板紙:68.9%、ホーム&パーソナルケア:27.3%、その他:3.8%)、幅広い製品展開を特徴としています。新聞用紙、出版印刷用紙、白板紙、包装用紙、情報紙、段ボール、家庭用紙と多数の市場で20%-40%程度のシェアを獲得しており、総合力に長けているとの評価でした。同社は家庭紙「エリエール」で有名で、2007年にはP&Gから国内の大人用おむつ「アテント」を買収し、大人用おむつではでユニ・チャームに続き2位、乳児用ではユニ・チャーム、花王に続き3位のシェアを保持しています。



直近では家庭紙事業が好調推移しているため、三菱商事が筆頭株主であり洋紙・白板紙に特化していた北越紀州としては、今後の業界再編を乗り切るためにも、どうしても提携しておきたい発行体だったと考えられます。 



もともとの今回の経緯ですが、大王製紙は従来連結会社が35社ありましたが、親会社の持株比率が過半数未満の関連会社が32社でありながら、会計上連結となっていました。



通常は株式保有比率が過半数の子会社が連結対象となりますが、影響力基準として過半数未満の関連会社でも人的関係、商取引含めた結び付きが大きい場合は、連結となる場合があります。



ただしあくまで経営権は株式保有比率に委ねられるため、本件で言えば、昨年創業家のスキャンダルから始まるグループ会社株式の買取り価格を巡り、創業家と決定的な確執を生んでしまったことで、生産拠点が経営陣がコントロール出来なくなるというリスクが取り沙汰されていました。今回は北越紀州がグループ18社の株式の大半を創業家から取得したうえで、大王へ売却するため、ようやく製販の資本のねじれが解消されることになります。 



グループ会社株式をいくらで買い戻すのかわかりませんが、先ずは、一安心というところでしょうか? 



今回の件は、当初のブログでも書いた通り、「会社は株主のもの」だということを改めて見せつけてくれました。ここに経営陣との決定的な差があります。結局は株式会社である以上、株式持分比率において平等であり、そこに株主の属性はなんら関係ありません。だからこそ、オーナー経営者には経営を司るための全うな見識と品性が必要だと思うわけです。 



今回どこがフィナンシャルアドバイザー(FA)となり、この案件を進めたのかはわかりませんが、先ずは創業家の株を他のバイヤーに売らせる気持ちにさせたことが一番大きい功績なのかもしれません。公開会社株式ですから、普通株式の譲渡に取締役会の承認は要らないわけですが、当然創業家にも経営陣にも、そしてバイヤーに取っても、説明のつくデールを纏めるのはそれなりに大変だった様な気がします。



更に。北越紀州は2006年の王子製紙からの敵対的買収阻止を行ったことで、M&Aを成約させるには何が重要なのかを十分学んでいたような気がします。いずれにしろ、大王製紙は個人向けのブランドが立っている会社なので、今後の展開に期待したいと思います。