日経によれば、金融庁は来年4月より、株主割当増資や証券会社が仲介する大口の株式取引に関わるインサイダー取引規制を緩和するそうです。不当な利益を得る目的でないことが明確な場合は規制の対象外にし、市場の活性化を促す狙いとか。
規制緩和の対象は「ライツ・イシュー」と呼ばれる増資方法と「ブロックトレード」と呼ばれる大口の相対取引で、金商法を改正します。

 このうちのライツ・イシュー、日本では昨年の3月にタカラレーベンが初めて行いました。
ライツ・イシューは、既存株主に新株予約権を無償で割り当て、株主が資金を払い込んで予約権を行使すれば株式を受け取ることができる手法であり、増資後の株式数は増えますが、既存の株主すべてに新株予約権を割当発行するため、ダイリューション(希薄化)による被害をできるだけ少なくしたり、保有比率を維持したりすることが可能になります。

このライツ・イシュー、実は米国、日本以外では普通に行われているファイナンス手法であり、特に欧州、中東、アフリカ諸国では直近3年程度のエクイティファイナンスの約60%程度がライツ・イシューだそうです。特にイギリス、ドイツ、オランダでは一定以上のオファリングレシオ(新規発行株数/発行済株式数×100%)のファイナンスはライツ・イシューで行わなければならず、スペインは原則全てライツ・イシューです。 欧州のライツ・イシューのスキームはほとんどがブックランナー(主幹事証券)がおり、コミットメント型・ハードアンダーライティング(引受責任)になっていますが、昨年3月タカラレーベンはノンコミットメント型・ベストエフォートであり、ブックランナーが付きませんでした。

 ライツ・イシューのメリット
既存株主
・既存株主のみに新規発行株式の先買権を無償で付与
・権利行使を行えば持分(議決権・エコノミクス)の希薄化なし
・権利行使を行わなくても権利売却によってエコノミクスの確保可能
・エコノミクスは株価水準にはニュートラル
発行体
・既存株主の公平性を確保した大規模な資本増強が可能
・ハードアンダーライティングにより、発行決議時点で調達額を確定した確度の高い資 本増強が可能
・権利行使価格が確定しているため、調達額は株価変動と無関係
・既存株主全体を対象としているため、市場動向に左右されにくい

それでもタカラレーベンのライツ・イシューはローンチ後に一時株価を下げましたが、その後業績上方修正もあり、株価を大きく上げており、ライツ・イシューそのものは成功だったと思っています。要は正直どのくらい権利行使してくるか分からないファイナンスのハードアンダーライティングはかなり引受リスクが高かった。でも、ある意味、ベストエフォートのスモール・ミドルキャップ案件でも95%権利行使できたと言う事は、少なくともファイナンス的には日本でもライツ・イシューは可能であるということがわかりました。

 今回当局の方でインサイダー緩和措置も含め、ブックランナーから見た法律的な部分が明確にされていくのはいいのですが、やはり最後は市況が重要であるということは変わりません。特に大型ファイナンスを念頭に置くとなると、ライツ・イシューが日の目を見るのはいつのことかと思うのであります。

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