今週の日経ヴェリタスの記事で、帝国データバンクの調査によると上場意向のある500社程度に対するアンケートで回答者の約4割が、上場コストや監査費用が膨大であるため、上場基準緩和を求めているとの記事が記載されています。

東証マザーズは昨年12月に新規上場基準の緩和と上場企業の上場廃止基準等規則変更の意図を発表しました。当然これは震災に対する影響の基づく上場基準緩和とは別のものです。
私も概ね、この上場基準変更を支持したいと思います。

上場審査には大きく2つあり、一つは事業の継続成長性審査であり、申請期の業績見込みの確からしさと、将来に渡る事業モデルのの成長性、換言すれば発行体の経営戦略の精査そのものです。
そしてもう一つは発行体の透明性審査です。内部管理統制構築およびコーポレート・ガバナンスの遵守の確認。平たく言えば、不正会計や一部役員の暴走が起きないようなチェック体制が機能していますか?ということの審査ですね。

今回のアンケートで、上場予備軍から希望があったのは、上場コスト、監査費用の部分ですか。私が上場申請担当者だったとき、東証審査、証券引受審査から出てくる意見はほとんど一般株主権利の保護に軸脚が置かれており、内部統制、予算実績管理などかなり厳格に行われていました。マザーズは本来ならベンチャーのエントリー市場であったはずなのに、実質は本則市場(東証一部、二部のこと)とほとんど変わらない体制整備を求められていました。

この部分は直接東証一部に上場するような発行体は別として、企業規模に関わらず概ね固定費に近いものであり、ざっくり両方込みで現在では1億円程度かかります。しかも販売管理費に計上されるため、発行体はこの固定費も含んだ上で、申請期の業績を積み上げなければなりません。

これは上場を検討されている方であればどれだけ大変なことかお分かりになると思います。
例えば、直前期に経常利益5億円の会社が、申請期に経常利益8億円で上場しようとすれば、1億円余分にコストがかかるわけですから、実質経常利益9億円にしなければならない。

例えば、経常利益率10%の発行体だとすると、直前期売上50億円、経常利益5億円を、申請期売上80億円、経常利益8億円でよかったのが、売上90億円、経常利益8億円(▲上場コスト1億円)となり、売上をさらに10億円積みあげなければならない。しかも利益率は下がるわけです。

やはり上場コストの緩和は行って欲しいと思います。但し間違えてはいけないのは、上場コストのほとんどは証券会社、監査法人費用ですが、全範囲を浅く監査するということではなく、審査する範囲等を濃淡つけて緩和し、時間と費用を削減するということになります。ここが大事。

また、上場審査の継続成長のポイントはあくまで「今のビジネスモデルがサスティナブル」であることを説明しなければいけないことなのですが、ここが難しい。「既存事業から派生した新事業を将来の柱にします。」と言ったら、「じゃあ、それが見えるまで上場待ちましょう。」と審査官に言われてしまう。「いや、上場で調達した資金でそのビジネス起こすのです。」とは言えんのです。この部分は当時でも対応難しかったですね。

間口は広くして上場してもらう。粉飾やガバナンス、業績下方修正等引き続き株主に配慮することは当然ですが、その前提として、所詮株ですからリターンの保証は出来ないわけです。怖いのであれば買わなければ良いわけで。個人的には多少なりとも健全に儲かっているビジネスであれば上場させ、その資金で成長してもらい、駄目だったら退場してもらうのはいいことだと思います。ただ重要なのは退場組に対する退出のための株式流動性のバッファー(いわゆる株式買取ルール等)を決めることが必要だとは思いますが。

但し。
今回ライブドアは積極的に会社が解体され、株主は損失を受け、堀江氏は収監されます。結局国は誰も勝者を認めなかった。
一方で東京電力の株主は保護される方向に向かうような感じです。出る杭は打たれ、古参の既得権益を守る国。日本はそういう国です。
日本の上場規制緩和を願う前に、さっさと海外で上場したほうが発行体のためでは?と思う今日この頃ではあります。

引き続き参加者募集中! Hiroの投資銀行サロン