さて、三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、MUFG)は21日、資本提携先の米金融大手モルガン・スタンレー(以下MS)を連結対象にすると発表しました。今夏にも保有する優先株を普通株に転換し、議決権の22.4%を握る予定です。 MSとの提携を発表したのは、米金融市場がリーマン・ショックに見舞われた2008年9月で、当初は普通株21%を90億ドルで取得するとしていましたが、結果的には同年10月、出資形態を議決権のない優先株に変更した経緯があり、今回の普通株転換で当初描いた構想が実現するものです。

 当然、議決権の保有比率が20%を超えると、日本の会計ルールでは持ち分法適用会社として、グループの関連会社になります。 MUFGは普通株転換後、MSに派遣している取締役を現在の1人から2人に増員し、今後は筆頭株主として発言力をもつことになります。

両社は日本の証券事業や世界的なM&A(合併・買収)などの支援事業を合弁で展開し、MSは業務面でもさらなる提携強化を検討しているとか。
以下の通り、2008年10月のMUFGがMSに出資した2つの種類株を記載しておきます。

転換型優先株式(議決権なし)
・引受株式数
普通株式 310,464,033 株相当
・引受価額
転換価額 1 株当たり 25.25 米ドル
・引受価額の総額
7,839,209 千米ドル
・配当利回り
10% 
・強制転換条項
1 年経過後、モルガン・スタンレーの普通株式株価が取引日数 30 日のうち 20 日、以上転換価格の 150%を上回った場合、優先株の 50%が普通株に転換されます。2 年経過後は、株主の承認が得られていれば、同様の条件で残りの優先株が全て普通株に転換されます。

償還型優先株式(議決権なし)
・引受価額の総額
1,160,791 千米ドル
・配当利回り
10% 
・償還条項
3 年経過後、モルガン・スタンレーが額面の 110%で償還する権利を有する。

報道にもあった通り、MSはこの2つの優先株により年間9億米ドル(約730億円)を支払っており、この負担はかなり大きかったと思われます。
今回はこのうち、議決権のない転換型優先株式の全株転換及び追加取得を考えているわけですね。MSの直近の株価パフォーマンスは昨年の12月上旬以降25.25米ドル以上の水準を維持しており、In the Money が続いた状態です。

確かこの出資は当初2008年9月に
「普通株式 30億米ドル (25.25ドル/1株) 優先株式 60億米ドル (31.25ドル/1株で転換可能。利回り10%、50%について、強制転換条件あり。) 潜在株式調整後出資比率 21% 出資比率10%以上を条件に取締役1名派遣」

という条件だったのが、プレスリリース後も9.68ドルと13年ぶりの安値を付け、合意していた普通株の取得価格25.25米ドルを62%下回ったため、MUFGの減損リスクを避けるため、急遽全株優先株とした背景があります。

普通株に転換後はMSはMUFGの持分法適用会社になるわけですが、昨年のMSの最終利益は5,463千米ドルであり、仮にこの22.4%を適用するとMUFGは1,223千米ドル(約1000億円)の利益の底上げになります。
但しMSの業績次第では逆に振れる場合もあり、先般みずほFGが発表した新自己資本規制対応を目的としたみずほ証券、みずほ信託の完全子会社化とは趣旨が違うようです。

リーマン・ショック当時、MUFGはMS取得するにあたり、米投資銀行のノウハウを習得するチャンスとして「賭けに出た」わけであり、まだ結論付けるのは早いかもしれませんが、MUFGは今回それなりの果実を受けようとしています。

一方でもうあまり覚えていないかもしれませんが、2008年1月、リーマン・ショックの前であり、サブプライムの渦中であった、メリルリンチに対してみずほコーポレート銀行が1300億円の優先株を引き受けたわけですが、普通株の転換期日となる2010年10月、結果的にはバンカメの普通株の0.3%を取得したにとどまり、時価総額は320億円でした。何事も判断の時期が難しいということなのでしょうね。

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