社会人大学院生と話していると、よく「類似PERマルチプルの倍率って平均使うのですか?それとも一番似た会社に合わせるのですか?」と聞かれます。

答えは「どちらでもない」というか「正しい答えなんてない」ということなんですが(笑)

重要なのは、自分は「誰」の立場でバリュエーションしているのかということなんですね。経営者なのか、売りたい株主なのか、買いたい株主なのかで、当然株価は違ってくると思います。

ただし、ここで一番重要なことを申し上げると、株は「需要と供給のバランスで成り立っている」ということです。

私は元々証券会社の人間なので、常にマーケット(投資家)を意識しながらバリュエーションせざるを得ません。だからいつも上場時に売出人と株価でもめますが(笑)

私はPERマルチプルについては、当初10社程度をピックアップした上で、類似会社の財務上の特殊要因を調整(ex.のれん代償却、繰越欠損控除適用等)し、再度5社程度に絞ります。その時に考えることは,やはり対象会社との企業規模の差、収益力の差(経常利益率等)、PER倍率の異常値については除外して行きます。

そしてその5社程度のPERの中央値(平均値ではない)と、一番近いと思われる比較対象先1社のPERとの両PERのレンジで物事を考えていくと。
そうすれば、ほぼ誰もがagreeできる会社群の中央値とプライシングのキモであるベンチマーク1社の両方を含めることができます。

ここで重要なのは、このレンジをプライシングするのは主幹事証券ですが、そのレンジの中で適正価格をビットするのは投資家だということです。これをブックビルティングといいます。そして公募価格が決まっていく。

だから、ある意味最終価格決定者は「投資家」だといってもいい。
ここでこのレンジが極端に偏った、もしくは説明に苦労するものであると
ほとんどレンジの下限に張り付き、ディールブレイク(上場中止)となります。
要は、レンジが高すぎて誰も買わないと。

発行体は高いほうがいいに決まっています。一方で投資家は逆でしょう。
目いっぱいにストレッチした株価では投資家は買いません。
なぜなら売る時に儲からないから。(笑)  株が売れなければ上場できません...

そういったプライシングの目線が一般的である中で、今期もIPOは低調になりそうです。審査も緩和され、震災の影響が顕著であり業績を落とした状況でも上場出来るとは云え、バリュエーションは相当ディスカウントされるのは間違いないでしょう。

以前も書きましたが、本当に上場したいのであれば、個人的にはバリュエーションが低くても、ファイナンス額を小さくして「上場出来る時にしておく」ほうが良いと思います。その後マーケットが回復し、業績も伸びれば株価が上昇する可能性も高く、6ヶ月後以降セカンドファイナンスが出来るかもしれない。

「チャンスの女神に後ろ髪はない」のです。

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