本日の日経では、金融庁がTOB(株式公開買い付け)の規制を緩和すると書かれています。投資家に対して郵送する必要がある書類の中身を大幅に圧縮するほか、一部をインターネット上で開示すれば済むように改める。情報開示の過度な規制を緩和することで、企業側の負担を軽くし、TOBを絡めた再編をしやすくするように後押しするそうです。
これはこれで事務手続きが簡素化されることなので、ウェルカムな話ですね。

一方で昨年の9月に経済産業省が企業のM&A(合併・買収)や事業再編を促すため、2011年度をメドに自社株を活用するTOBの条件を特例的に緩和し、産業活力再生法(産活法)で国の認定を受けた企業を対象として、完全子会社化のための少数株主からの株式買い取りなども容易にするというプレスリリースがありましたが、その後動いているのかどうか?

経産省の方についてはM&Aを促進させるために自社株を対価とする方法や、少数株主を強制排除するための方法を従来より簡素化するというものですが、確かにこの緩和そのものはいいとは思いますが、これによりM&A、TOBが大きく使いやすくなるかというと、正直疑問です。

今までも、自社株を対価とするTOB(エクスチェンジ・オファー)は認められていましたし、少数株主の排除は最初のTOBで2/3以上取得出来れば、全部取得条項付き株式を割当て、二段階買収することでスクイーズアウトすることは可能だったわけです。要は、本気でヤル気があればそれなりの方法はあった。

一方で自社株を対価とする「TOBでは相手企業の株価を高めに評価するケースが多く、利益を損ねる恐れのある自社の既存株主の理解を得るための総会での特別決議なども求められる」のは、株主からしてみれば当たり前なわけで、ここの要件を緩和してTOBを容易にすると言うのは、本末転倒の様な気がします。

その時にはパナソニック・三洋電機の話を持ち出してはいますが、このクラスのディールであればTOBの手続き等はアドバイザーが気合をいれてやりますから、エクスチェンジオファーそのものが、何かの大きな弊害になったとは考えにくいです。

自分としては、TOBの対価が現金であることが多いのは、結構セラーの方の要望だったり、資本コストの低い借入金をを使ったほうがエコノミクス的に有利だったからなんだろうなと思っています。あとは自社株を割当てる場合は、金商法上は公募扱と同様にファイナンス扱いになりますし、規模が大きい場合には、希薄化や渡した株主の保有比率が経営に影響する場合も考えられるでしょう。

ですから、TOB関係者は国が考えているより、もっとクールに、そして合理的に考えていると思われます。だから、今回の経産省の提案はTOBそのものの本質的な部分の解決にはならない。

一方で、近年敵対的買収防衛の一環として、TOBの要件、開示を厳格化した経緯がある一方、今回の緩和策を見てみると個人的にはTOBについて非常にちぐはぐなイメージを持ちます。敵対的買収は嫌だけど、M&Aそのものはやりたいとか。その辺を考えると日本のM&Aはまだまだなんだなあと。

今年、特に日本ではM&Aの環境も大きく変わってるだろうなと思います。
というか、もう今の意識では会社存続そのものが成り立たなくなってきてる。
そんな時代です。

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