日経電子版2/26によれば、ソフトバンクの債券格付けが約11年ぶりにシングルA格に戻ったことにより、財務戦略が大きく変化することになりそうだと伝えています。
 「WBSをリファイナンス(借り換え)する蓋然(がいぜん)性が高まっている」。日本格付研究所(JCR)は2月17日付の発表資料で財務戦略の転換点が近づいていることを格上げの理由に挙げた。とか。

借り換えが可能になる今年11月に向けて準備は進んでおり、10年12月と11年1月には英ボーダフォンとヤフーから携帯通信事業の持ち株会社BBモバイルの優先株などを取得し、残るはローン部分だけになったとのこと。

当時ソフトバンクのボーダフォン買収スキームですが、
買収総額は1.75兆円であり、
資金調達は銀行借入(LBO)1.1~1.2兆円、劣後借入(英ボーダフォン)1000億円、
優先株式(ボーダフォン)3000億円、優先株式(Yahoo!)1200億円、普通株式(ソフトバンク)2000億円を計画し、ソフトバンクのキャッシュアウトは2000億円とし手元資金でまかなう予定でした。

また、ボーダフォンとYahoo!が引き受ける優先株は無議決権株ですが、7年間累計のEBITDAが3.35兆円を超えた場合には普通株式を購入するオプションを付与していました。これは英ボーダフォンは約10%、Yahoo!は4%の普通株を入手する権利を持っているということになります。昨年この部分を買い戻したということですね。

それで、約半年後にこのスキームをWBSに切り替えたわけですが、
まずは一般論から。

リース債権やオートローン、不動産ローン等の金銭債権を多数集めて、そこから発生するCFを裏付けとして発行された証券をABS(Asset Backed Securities 資産担保証券)といい、ある特定の事業が生み出す将来のCFを裏付けとして証券を発行することを事業証券化,WBS(Whole Business Securitization)といいます。

特別目的事業体(SPE Special Purpose Entity)が発行する社債、ローンに投資を行ないSPEは調達資金を事業運営者に担保付ローンとして貸し付け、その元利金返済には事業運営者が行なう特定の事業のCFが充当されるものです。

この場合はWBSファンディングがSPEであり、特定金外信託受託者(みずほ信託)を通じてソフトバンクモバイルのローンに充当し、供与されたローンを原資としてソフトバンクモバイルはBBモバイルにローンを提供、BBモバイルがLBOローンの出し手であるシニアレンダー(17金融機関)にローンを返済すると共に、英ボーダフォンから供与された劣後ローンの一部も返済を行なうスキームですか。

既存のABSでは裏付資産自体が将来のCFを生みますが、WBSでは事業運営者が土地や設備等の事業資産を使用し、事業を行なって初めてCFが発生するため、WBSには事業リスクと事業運営者の信用リスクが混在し、CFの変動性はABSよりも高くなります。

そこで事業リスクに対しては証券の満期まで事業継続性を担保するための仕組みが必要となり、事業運営者の信用リスクに対しては事業運営者がデフォルトしても社債・ローンの返済が可能な仕組みが必要であるため、今回のWBSにもそのスキームが構築されています。

格付機関がそのスキームが有効だと判断すればWBSには事業運営者よりも高い格付が付与され、資金調達コストが軽減できます。確かこの時のWBSは1%程度下がったはずです。
具体的には事業運営者であるソフトバンクの格付はS&PでBB-であるのに対し、クラスAローン、クラスAノート(債券)共にAが付与されました。これは事業運営者の信用リスク軽減ですね。

これが今回、ソフトバンクの格付がシングルAになったことで、自社で資金調達してWBSを償還させコベナンツを排除し、ソフトバンクモバイルのCFを新たな大規模投資、その他事業の返済、投資に回すことが出来ると言うことになります。

今後のソフトバンクの成長戦略に期待したいと思います。

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