日経朝刊によれば、 伊藤園は23日、第1種優先株式の買い入れ株数が昨年末に設定した上限の30万株に達し、すでに保有する分と合わせた自己株は106万株となり、このうち単元未満株主からの買い増し請求に備える分を残し、90万株を3月31日に消却するそうです。

そうですか。
消却比率は少ないですが、日本では上場優先株の浸透はやはり難しいのかなと思った次第です。

これを見るとソニーのトラッキングストックを思い出します。
もう10年前になるのですが、2001年にソニーが子会社であるソニーコミュニケーションネットワーク(SCN)を対象とした子会社連動株式を東証に上場させましたが、売買高が出来ず、2005年にソニー株式に一斉転換させることで終了したことを思い出します。もっともSCNは同月東証マザーズに上場しましたが。

話を戻しますが、伊藤園がこの第一種優先株式(以下、優先株)を発行したのは、2006年9月であり、先ず既存株主1株に対して0.3株を無償割当行った後、10月に公募・売出(オーバーアロットメント含む)および第三者割当増資にて約186億円をファイナンスしました。

当時伊藤園の業績は好調で、コア事業の緑茶事業に加え、タリーズコーヒーを買収するなど積極なM&Aによる資金ニーズが発生していたこと、一方で配当性向が34.7%はあるも、安定的な業績を背景に個人株主から増配圧力がかかっていたことによるファイナンスでした。

そのニーズをかなえるべく設計したのがこの優先株式で

1.優先株は普通株に対して125%の配当を行う
2.一方で議決権はない

というもので、当時論点となったのは、
「議決権はないが、普通株に対して125%の配当を優先して受ける権利」の価値をどう算定するかということでした。


結果的には、議決権がないことのディスカウントが約30%と考えられ、1781円となっています。
優先株はその後株価スプレッド(普通株価と優先株価の差を普通株価で割ったもの)、は30%程度で推移していったものの、売買高は普通株の40%程度であり、株式流動性が低かったと言えます。

株式で重要なのは株価そのものだけでなく、「いつでも売却出来る」(買いたい時に買えるではない)という部分が極めて重要であり、伊藤園の優先株はここがあまりなかった。売りたい時に売れない株は魅力ないですよね。

伊藤園は優先株をローンチした以降、業績も前年割れとなりTOPIXに対しても、アンダーパフォームとなってしまい、株価スプレッドは40%とひらいてしまいました。
現状では25%と戻してはいますが、株式流動性の指標であるローンチしてからの月間株式売買高回転率の平均は2.3%であり、普通株の7.6%に比べ1/3以下となってしまいます。

伊藤園が目指した議決権は無くてもいいから配当のいい優先株。
結果は残念な事になっていますが、株主には受け入れにくかった。

客観的に考えれば、当初設計した優先株に配当利回り2.1%、配当性向39%は同程度の配当政策を行っている発行体は、探せばいくつかあったでしょうし、議決権の有無、株式流動性を勘案した場合、あえて伊藤園の優先株を買う必要は見当たらないと言うことなのでしょう。

一方で、海外の無議決優先株は以前フォルクスワーゲン株やロシュ株があり、それなりの成功をおさめていたりするのですが、「日本人に優先株はなかなか馴染まない」のは寂しいところではあります。

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