今日の日経で、韓国鉄鋼最大手のポスコが日本の環境ベンチャーのゼネシス(東京・品川)を買収する契約を発表しました。第三者割当増資6億1000万円を引き受け、ポスコと日本法人のポスコジャパンでゼネシス株の51%を保有します。海洋温度差発電や排熱発電の技術を持つ同社買収で、新エネルギー分野を将来の主力事業の一角とする足がかりを得るようです。

で、今回この記事をエントリーしたのは未上場の第三者割当増資って、あまり情報が取れないのですが、今回このゼネシス、有価証券届出書を堤出しています。というか、売上3億円なのですが、有価証券報告書を堤出しており、継続開示会社でした。というのは、この会社既存株主が1265人もいます。金商法では未上場でも株主が500人以上の場合には有価証券報告書の堤出が義務付けられています。有報堤出ということは監査証明が付いているわけで、昨年トーマツから田村会計士事務所に変わっていましたが、監査証明は付いています。但し継続疑義付きですが。
その結果、ゼネシスは今回、株主数、調達金額でも有価証券届出書堤出が義務となりました。但しそのおかげで、未上場会社の第三者割当のバリュエーションの目線というのがある程度見えます。以下、価格算定根拠の抜粋です。

「平成23年3月期の当社業績については売上高3億、営業損失2億、経常損失1.7億、当期純損失1.7億と予想しておりますが、下記「6.大規模な第三者割当の必要性」に記載の通り、財務体質の強化及び新たな成長基盤の早期構築の両面を実現することが不可欠であると認識しております。新株式の発行価格につきましては、当社のファイナンシャル・アドバイザーである日興コーディアル証券株式会社による助言を参考にしつつ、純資産方式を基準に算定し、当社事業計画を基にしたディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法(事業計画から将来企業が獲得するであろうフリー・キャッシュフローを見積もり、資本コストを反映した一定の割引率で現在価値に割り引くことで事業価値を算定する方法。以下、「DCF法」といいます。)も評価方法として参考にしました。なお、割当先である株式會社ポスコ(POSCO)及びPOSCO JAPAN株式会社も純資産方式での価格検討を行っておりましたため、純資産方式を基準にして交渉を致しました。

その結果、直近の有価証券報告書(平成22年6月30日提出)の一株当たり簿価純資産額である755円及び平22年9月30日現在の一株当たり簿価純資産額である591円、DCF法による一株当たりの参考株価評価値は1,573円~1,746円のレンジとなりました。

本第三者割当によって株式會社ポスコ(POSCO)及びPOSCO JAPAN株式会社は発行済株式数の過半数を取得することになるため、コントロールプレミアム(企業価値評価において、経営権に影響力を持つようなまとまった割合の株式を取得する場合において、一定のプレミアムを上乗せした形で、買収価格を決定するという考え方) を簿価純資産額591円に50%を上乗せした価格が妥当であると判断し、更にDCF法による算出数値を加味し、割当先と交渉を致しました結果5.5%を上乗せし、一株919円に決定致しました。

919円は、直近の有価証券報告書(平成22年6月30日提出)の一株当たり簿価純資産額である755円に対して21.72%、平22年9月30日現在の一株当たり簿価純資産額591円に対して55.50%のプレミアムを加えた金額となっており、当社と致しましては本価格は合理的で会社法第199条第3項に定める特に有利な金額に該当しないと判断しております。」

要は、直近の簿価純資産(といっても監査証明があるので実質は時価純資産)にコントロールプレミアム50%を乗せ、DCFを5.5%乗せた水準の919円です。DCFのレンジ1573円から1748円のAv1660円の45%ディスカウントです。赤字なのでマルチプルの議論は規模も含めて困難だったのでしょうかね。

但し今回わりときっちりしているのは東証ベースでの希薄化制限ルールに抵触しないように自己株消却も行っているところでしょうか? 以下抜粋です。

「平成22年11月15日現在の当社の発行済株式総数は1,184,404株でありますが、自己株式246,991株を所有しているため、議決権数は937,413個になります。今回発行予定の新株式総数は663,000株(議決権数663,000個)であり、新株式発行により新株式発行前の総発行済株式数に対して約55.98%(議決権数70.73%)の割合で希薄化が生じ、25%以上の希薄化となるため、大規模な第三者割当に該当するものであります。
なお、大規模な第三者割当による既存株式の希薄化の影響を抑えるために、本届出書提出後から効力発生までの間に、既存の自己株式246,991株と、当社代表取締役およびその親族等の所有する当社株式298,682株の無償譲渡を受け、合計自己株式545,673株を消却いたします。 」

最近スモールキャップ案件に携わることが多い中、個人的にも非常に参考になるケーススタディでした。

やっぱり、常に幅広くマーケットを見ておかないとダメだなーと感じた次第です。

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