今日は、前回の続きで、IPO(Initial Public Offering 新規公募増資→株式公開)の株価が何によって決まっていくのかについてご説明したいと思います。

まず、発行体の「IPO時の株価は2つある」とお考えください。

ひとつは、昨日アップした、様々な検討を行った結果としての時価総額(マーケットキャップ 株価レンジ×株数)。これをフェアバリュー(fair value)と呼び、通常クラスで我々がこの会社の価値はいくらかと考える部分ですね。

もうひとつはIPOディスカウント後の時価総額ですか。実際の日本のIPO時の株式発行・売出目論見書に記載される想定発行価格から始まり公募価格にいたるまでの株価はこちらが記載されているはずです。もちろんそんなことは何処にも書かれていませんが。(笑)

IPOディスカウントはフェアバリューの20%~30%が多いと思われます。要は想定時価の20%~30%安で売ってるわけですね。

ではなぜそんなことをするのか..........

大きく理由は2つです。

ひとつは昨日も書きましたが、投資家目線です。客(投資家)は正規の値札では買いずらい。今この値段が正しいのは解る。でもそれでは「いつ買っても一緒」ということであり、今買わなくてもよいと。その場合、投資家から見たIPOの魅力が薄れ、発行体が考えている株数を消化できない可能性があります。

極論すれば「100円のものを100円で売ってるんじゃ芸がない」ということです。投資家は短期的・長期的に株価上昇が見込めればいいわけで、別にこの銘柄でないとダメな理由はあまりないですから。

もうひとつは、ちょっと違った視点ですが、「情報の連続性」の部分です。既に上場している会社は過去暦年で財務諸表を定期的(四半期毎)に開示しており、その数値の連続性については担保されていると言ってもよい。

一方で、IPOする会社は今まで財務諸表を開示しておらず、目論見書で過去5年(CPA(監査法人)適正意見付は直近2年)の数値が一度に出てきます。その数値の根拠や連続性に疑義はありませんが、ちょっと引き気味かと(笑)
そして、この情報の連続性によるディスカウントが解消されるのは次の決算開示(中間・四半期ではない)が行われた時だといわれています。配当政策も含めて初めて開示財務諸表として2年連続するということですかね。

ここまで書くと、ある程度はお解かりかと思いますが、このフェアバリューとIPOディスカウントのギャップが、公募価格と初値との関係に近いと考えていただいて結構です。

となると、理論上は公募価格の20%~30%が初値になるはずですが、なかなかそうは行きません。

ひとつは株式流動性。業界ではオファリング・レシオ(Offering Ratio)といいます。計算は簡単で(公募株+売出株)/ 本件公募含む発行済株式総数)。要は発行済み株式数のどの位を市場に放出(公募・売出)すれば、適正に投資家が株を消化できるかという指標のことなのですが。

ここはバリューエーションとは関係ない部分ですが、IPOを成功させるために極めて重要なファクターとなっています。この適正レンジは結果的にIPOの場合、20%プラスマイナス5%が良いディール(deal 案件・取引)だといわれています。

このレンジより下だと、株式流動性が乏しく、希少性が高まり、株価がトぶ(初値が公募価格の何倍にもなること)ことになり、上だと株が市場で消化できず、ダブつくため、公募価格を割り込む初値となってしまい、主幹事証券としてはディールコントロール出来なかったことになります。

もうひとつは、マーケット全体のセンチメント・モメンタムです。ここ三ヶ月程度の市場全体、セクターボラティリティ(各業種別の株価指標推移、新興市場の相場の値動きがどうなっているのか、発行体自身の業績がよくても、そもそも米国市場や不確定要素(9.11やブラックマンデー、エンロン等、今回のサブプライムもそうです)が発生した場合、大きく投資家の気持ちを変化させることになります。

こうやって、様々なファクターを加味した上で、IPOする。発行体の価格に押し切られて、高い公募価格を設定し、仮に投資家の需要を集められず、公募割れ(初値が公募価格を割り込むこと)となった場合、IPOは「失敗」です。

上場は出来ますが、その会社はその後ずっと「公募割れの会社」と市場・投資家に言われ、レピュテーション(reputation 評判・評価)が下がり、当分セカンドファイナンス(IPO後の増資やCB発行のこと)をすることが出来なくなります。なぜなら、その会社は「縁起が悪いから」投資家が集まらない.......

だから「株は需給」だということになるのですが(笑)

いずれにしろ、資本市場は非常に面白いです。

ではまた。

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