昨日。日経産業新聞フォーラム「日本版ライツ・イシューを検証する」に参加してきました。プレゼンはJPモルガン証券 神保副社長、森・濱田松本の鈴木パートナー弁護士。
今回は内容が多いので、2回に分けて書きたいと思います。ただし、フォーラムの受け売りでは価値がないので、今までの自分のプライマリー経験も踏まえてコメントしてみたいと思います。

フォーラムの印象をお二人のプレゼンは非常に論旨明快でわかりやすかったですが、パネルディスカッションはpoorでしたという感じでしょうかww

さて、ライツ・イシューって何ぞ?というところから。
当初、東証でライツイシューがプレスされた時には私はこの様なコメントを残しています。ご参考まで
http://ameblo.jp/hiro-the-hero/entry-10418108579.html

公募増資の意味と課題
企業のエクイティファイナンスはいくつかの方法がありますが、典型的なのは公募増資でしょうか。
いわゆる普通株の新株発行(自己株処分含む)ですが、有利発行でない場合は取締役会の発行決議でよく、理屈上はダイリューション(希薄化)が起きない様な業績やエクイティストーリー(資金使途等)が説明出来る発行体がブックランナー(主幹事)の引受審査を経た上で、ローンチしてました。

いわゆる、どんな発行体でもファイナンス出来るわけではなく、業績がよく、ニューマネーを得ることでで新たな投資や事業拡大を納得感を持って説明出来る発行体が中心となっています。
また、それ以外の重要ファクターとしては株式流動性があります。株式売買高回転率という指標ですが、具体的には1か月(20営業日)にマーケットキャップ(株式時価総額)の何%が売買されているかということなんですが。一般的に公募増資でマーケットが消化出来る株数は売買高の3か月分が目安になっており、更に上限は概ね15%程度です。IPOは株が初めてマーケットに放出されるので20%~25%まで消化出来ます。要は公募増資は業績以外にも発行済株式の流動性や公募増資額に制約が出るということですね。
どんなに業績が良くても、今の発行済株式と同数の株式発行は現実的でないということでしょうか(ここ重要です)
野球に例えると、公募増資は150キロ超のストレート。分かりやすくて、どの投手も投げられる訳でではなくみんなからの羨望の的。松坂投手みたいな。ただし、珠が速くて仕掛けがないだけに、バットの芯で捉えられた場合、持って行かれます。要はファイナンスに失敗すると大きく株価を下げることになる。

そういった意味ではCBや新株予約権、ハイブリッド債などはカーブ、フォークボールみたいなものでしょうかww
そういった公募増資が行われるにあたり、従来より既存株主(特に欧州系機関投資家と聞いてますが未確認)より、保有比率が減少してしまうことや買い増す権利を与えられないことに対して不満が出ていたと聞いています。


日本におけるライツ・イシュー導入の背景
そこで、にわかに日本でもライツ・イシューが脚光を浴びる様になったわけですが。
ライツ・イシューは、既存株主に新株予約権を無償で割り当て、株主が資金を払い込んで予約権を行使すれば株式を受け取ることができる手法であり、増資後の株式数は増えるが、既存の株主すべてに新株予約権を割当発行するため、ダイリューション(希薄化)による被害をできるだけ少なくしたり、保有比率を維持したりすることが可能になります。

このライツ・イシュー、実は米国、日本以外では普通に行われているファイナンス手法であり、特に欧州、中東、アフリカ諸国では2008,2009のエクイティファイナンスの約65%程度がライツ・イシューだそうです。特にイギリス、ドイツ、オランダでは一定以上のオファリングレシオ(新規発行株数/発行済株式数×100%)のファイナンスはライツ・イシューで行わなければならず、スペインは原則全てライツ・イシュー。
JPモルガンの神保副社長(かなりダンディな方でした50歳くらい?名刺交換させていただきましたw)が言うには、欧州は昔から発行体は既存株主の権利を尊重する文化があるということであり、米国は発行体のマネジメントの経営権限が強く、経営者の判断で公募増資を行っていると。一方で結果を出さなければCEOは株主からすぐクビにされるので、どっちもどっちと言う事なんだそうです。では、なぜ日本は企業文化は欧州に近い(と私は思ってます)にも関わらず、米国型の公募増資がほとんどであったのか?私にも理由はわかりません。

欧州のライツ・イシューのスキームはほとんどがブックランナーがおり、コミットメント型・ハードアンダーライティング(引受責任)になっており、今回のタカラレーベンのようなノンコミットメント型・ベストエフォートではありません。

ライツ・イシューのメリット(JPモルガン作成)
既存株主
・既存株主のみに新規発行株式の先買権を無償で付与
・権利行使を行えば持分(議決権・エコノミクス)の希薄化なし
・権利行使を行わなくても権利売却によってエコノミクスの確保可能
・エコノミクスは株価水準にはニュートラル

発行体のメリット
・既存株主の公平性を確保した大規模な粗本増強が可能
・ハードアンダーライティングにより、発行決議時点で調達額を確定した確度の高い資本増強が可能
 権利行使価格が確定しているため、調達額は株価変動と無関係
 既存株主全体を対象としているため、市場動向に左右されにくい

ここで、重要なのはやはり大規模のファイナンスが可能だということなんでしょうかね。

ライツ・イシューのエコノミクスは
発行済株式が1000株で株価200円、割当比率1:1の場合、新株予約権は1000個で、発行新株式数は1000株。権利行使価額は100円だとした場合、ディスカウント率は50%でTERP(権利落ち後理論株価 / Theoretical ex-Rights Price)は(200×1+100×1)÷ (1+1) = 150円です。ですから新株予約権の理論価格はTERP150円- 権利行使価格100円 = 50円となります。

今回、タカラレーベンではこの新株予約権が上場され、理論価格に対し大きく振れたということが、先日のロイターは問題視しているようです。
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15694520100607
ではこの件も含めてタカラレーベンのディールサマリーは次回。

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