4月1日です。
3/末は日経平均11000円台をキープし、先ほどリリースされた日銀短観のDIかなり改善しておりセンチメントも前向きですかね。

さて、今日は第一生命が上場します。
売り出し価格で計算した時価総額は1兆4千億円で、1998年のNTTドコモ以来の大型上場。売買注文の受け付け開始は午前8時から始まっています。
 今回相互会社が今日付けで株式会社化することで、で700万人強の保険契約者が株式または現金を受け取ることになります。株主数は150万人程度で、NTTの103万人(2009年3月末)を上回り、国内企業で最多となりますか。。
 東証は市場の混乱を避けるため、第一生命株について特例を適用し、本日午後1時の1回だけの取引で初値を決めて、取引を終える予定です。。
IPOの株価の算定についておさらいを。
よく「類似PERマルチプルの倍率って平均使うのですか?それとも一番似た会社に合わせるのですか?」という質問を受けます。

答えは「どちらでもない」というか「正しい答えなんてない」ということなんですが(笑)
重要なのは、自分は「誰」の立場でバリュエーションしているのかということなんですね。経営者なのか、売りたい株主なのか、買いたい株主なのかで、当然株価は違ってくると思います。

ただし、ここで株で一番重要なことを申し上げます。
株は常に「需要と供給のバランスで成り立っている」ということです。

小職は証券会社の人間なので、常にマーケット(投資家)を意識しながらバリュエーションせざるを得ません。だからいつもIPO時に売出人と株価でもめますが(笑)

小職はPERマルチプルについては、当初10社程度をピックアップした上で、類似会社の財務上の特殊要因を調整(ex.のれん代償却、繰越欠損控除適用等)し、再度5社程度に絞ります。その時に考えることはやはり、対象会社との企業規模の差、収益力の差(経常利益率等)、PER倍率の異常値については除外して行きます。

そしてその5社程度のPERの中央値(平均値ではない)と、一番近いと思われる比較対象先1社のPERとの両PERのレンジで物事を考えていくと。
そうすれば、ほぼ誰もがagreeできる会社群の中央値とプライシングのキモであるベンチマーク1社の両方を含めることができます。

ここで重要なのは、このレンジをプライシングするのは主幹事証券ですが、そのレンジの中で適正価格をビットするのは投資家だということです。
これをブックビルティングといいます。そして公募価格が決まっていく。

だから、ある意味最終価格決定者は「投資家」だといってもいい。
ここでこのレンジが極端に偏った、もしくは説明に苦労するものであると
ほとんどレンジの下限に張り付き、ディールブレイク(上場中止)となります。
要は、レンジが高すぎて誰も買わないと。

発行体は高いほうがいいに決まっています。一方で投資家は逆でしょう。
目いっぱいにストレッチした株価では投資家は買いません。
なぜなら売る時に儲からないから。(笑)
株が売れなければ上場できません.........

ここらへんは、IPOディスカウント・株式流動性という項目も含めて次回、アップしたいと思います。

PS
このバリュエーション手法はあくまで参考ということで。株価はかなりコンサバになると思います。
だから経営者はレンジの上限を超すような株価でも買いたいと投資家が言うようなロードショー(上場承認直後の機関投資家IR ※映画ではありません 笑)を行い、PERマルチプルの上限倍は近い株価を提示するというのも「あり」ですよ(笑)


まず、発行体の「IPO時の株価は2つある」とお考えください。

ひとつは、昨日アップした、様々な検討を行った結果としての時価総額(マーケットキャップ 株価レンジ×株数)。これをフェアバリュー(fair value)と呼び、通常クラスで我々がこの会社の価値はいくらかと考える部分ですね。

もうひとつはIPOディスカウント後の時価総額ですか。実際の日本のIPO時の株式発行・売出目論見書に記載される想定発行価格から始まり公募価格にいたるまでの株価はこちらが記載されているはずです。もちろんそんなことは何処にも書かれていませんが。(笑)

IPOディスカウントはフェアバリューの20%~30%が多いと思われます。要は想定時価の20%~30%安で売ってるわけですね。

ではなぜそんなことをするのか..........
大きく理由は2つです。
ひとつは昨日も書きましたが、投資家目線です。客(投資家)は正規の値札では買いずらい。今この値段が正しいのは解る。でもそれでは「いつ買っても一緒」ということであり、今買わなくてもよいと。その場合、投資家から見たIPOの魅力が薄れ、発行体が考えている株数を消化できない可能性があります。
極論すれば「100円のものを100円で売ってるんじゃ芸がない」ということです。投資家は短期的・長期的に株価上昇が見込めればいいわけで、別にこの銘柄でないとダメな理由はあまりないですから。

もうひとつは、ちょっと違った視点ですが、「情報の連続性」の部分です。既に上場している会社は過去暦年で財務諸表を定期的(四半期毎)に開示しており、その数値の連続性については担保されていると言ってもよい。
一方で、IPOする会社は今まで財務諸表を開示しておらず、目論見書で過去5年(CPA(監査法人)適正意見付は直近2年)の数値が一度に出てきます。その数値の根拠や連続性に疑義はありませんが、ちょっと引き気味かと(笑)
そして、この情報の連続性によるディスカウントが解消されるのは次の決算開示(中間・四半期ではない)が行われた時だといわれています。配当政策も含めて初めて開示財務諸表として2年連続するということですかね。


ここまで書くと、ある程度はお解かりかと思いますが、このフェアバリューとIPOディスカウントのギャップが、公募価格と初値との関係に近いと考えていただいて結構です。

となると、理論上は公募価格の20%~30%が初値になるはずですが、なかなかそうは行きません。

ひとつは株式流動性。業界ではオファリング・レシオ(Offering Ratio)といいます。計算は簡単で(公募株+売出株)/ 本件公募含む発行済株式総数)。要は発行済み株式数のどの位を市場に放出(公募・売出)すれば、適正に投資家が株を消化できるかという指標のことなのですが。
ここはバリューエーションとは関係ない部分ですが、IPOを成功させるために極めて重要なファクターとなっています。この適正レンジは結果的にIPOの場合、20%プラスマイナス5%が良いディール(deal 案件・取引)だといわれています。
このレンジより下だと、株式流動性が乏しく、希少性が高まり、株価がトぶ(初値が公募価格の何倍にもなること)ことになり、上だと株が市場で消化できず、ダブつくため、公募価格を割り込む初値となってしまい、主幹事証券としてはディールコントロール出来なかったことになります。
もうひとつは、マーケット全体のセンチメント・モメンタムです。ここ三ヶ月程度の市場全体、セクターボラティリティ(各業種別の株価指標推移、新興市場の相場の値動きがどうなっているのか、発行体自身の業績がよくても、そもそも米国市場や不確定要素(9.11やブラックマンデー、エンロン等、今回のサブプライムもそうです)が発生した場合、大きく投資家の気持ちを変化させることになります。

こうやって、様々なファクターを加味した上で、IPOする。発行体の価格に押し切られて、高い公募価格を設定し、仮に投資家の需要を集められず、公募割れ(初値が公募価格を割り込むこと)となった場合、IPOは「失敗」です。

上場は出来ますが、その会社はその後ずっと「公募割れの会社」と市場・投資家に言われ、レピュテーション(reputation 評判・評価)が下がり、当分セカンドファイナンス(IPO後の増資やCB発行のこと)をすることが出来なくなります。なぜなら、その会社は「縁起が悪いから」投資家が集まらない.......

だから「株は需給」だということになるのですが(笑)

いずれにしろ、資本市場は非常に面白いです。

引き続き参加者募集中!  Hiroの投資銀行サロン